胸の音を聴こうと、いつものように聴診器を当てていたときだった。
「……男同士の性行為の仕方を教えてほしい」
「……っ、え〜と? 悪い。聴診器使ってたから聴き取れなかった」
聴き取れなかったなんて、嘘だ。
むしろ、聴診器をつけてたおかげで、よく聞こえた。
胸の奥の響きと合わせて、一言一句、全部。
よりによって、性の話、それも“男同士”のやり方なんて。
こいつの口から出てくるのが妙に可笑しくて、思わず笑っちまいそうになる。
片耳だけでも聴診はできる。
だから、俺は左耳のイヤーチップを外し、器具をそのまま胸に当てたまま、視線だけをキィニチに向けた。
「……で、なんだって? もう一度言ってくれ。今度はちゃんと聞いてっから」
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