もし平行世界があったらどうなるだろう？彼らは本当に相性が良すぎる。

長い間、私は平行世界のことを想像していたのだ。戦争のない世界、あるいは次元が分裂する前の世界と理解してもらってもいい。

とにかく、二人は何となく一緒になって……

平行世界の黒咲隼は、基本的に戦前の黒咲隼と大差ない。だが次元分裂前の設定なので、遊斗や瑠璃はいない。ただ、快斗たちはいるはずだ。エクシーズ次元の黒咲隼に比べると、少し寂しがり屋で、占有欲は相変わらず強いが、実はとても優しく、理想的な彼氏だ。

平行世界のデニスは、基本次元編のデニスに近い感じで、何も心配することがない性格だ。個人的な思い入れから、甘いものが好きで、ぬいぐるみが好きという設定を追加した。なにしろEmデッキのモンスターたちはみんな可愛いのだから、彼が可愛いものが好きでも不思議はないだろう？　それに甘いものが好きというのは、ED3から来ている。会場でデニスと遊矢だけが甘いものを食べていたのだ。遊矢は14歳の子供だけど、あなたもそうなのか？！

　今日、久々に休みが取れそうだったからイサミとデートでもしたいなと思い、電話で勇気を出して誘ったんだ。けれど残念なことに、ダイダラメンバーで飲みがあると断られてしまった。更にイサミは虫の居所が悪かったのか、少しだけでも会おうと誘ったが電話を切られてしまった。メッセージも既読が付かず、俺はしょんぼりした。でも……
「あ、来たきた。よっスミス」
　そのダイダラメンバーの飲み会に来てくれ、とヒビキから連絡があったのでカッ飛んで行った。あぁ、もちろん人の身のままで。一秒でも早くイサミに会いたい、その一心だった。
「やあヒビキ。イサミは？」
　そこ、とヒビキが指を刺した先には、テーブルに突っ伏したイサミがいた。
「……もしかして潰れてる？」

蝶葬と工房のグレムル深夜1時を過ぎ、もう既に私が居る階の明かりは殆ど消されている中、私は未だ終わらない仕事に取り掛かっていた。

全ての業務処理があと何時間で終わるかどうかはもう考えなくなっていた。
終わらせてもまた別の人間から仕事が増やされるのだ。
数える事に意味を見出す方が難しくなった。

「……」

不意に、何だか妙にオフィスが寒く感じて、少しだけ肩を回した。
血行不良が原因だと思ったのだ。

回した腕を再びキーボードに伸ばした時だった。

「生きていく為にはここまで働かなきゃいけないのか？」
「……？」

頬を両手で挟まれ、上を向かされると……いつもと雰囲気の違うグレゴールが私の顔を覗き込んでいた。

「働いて、働いて……その先に望む物はあるのか……？」