初日の出を待つフロストリーフと、仕事を抜け出したドクターの話 ヘリポートに繋がる通用口を抜けると、空にはまだそれなりの数の星が瞬いていた。
時刻は深夜と早朝の境。日の出を目前に控えた空は地平線に近い場所から徐々に白み始めている。適当に座れる場所でもあればと辺りを見回したが、ヘリポートにそんな余計なものが飛び出しているはずもなく、代わりに視界の端に引っかかったのは小さな人影だった。
「フロストリーフ……か?」
「ん、ドクターか」
徐々に明るくなり始めているとはいえ、いまいち判然としない視界の中で直感的に『そう』思っただけだったのだが。小さく跳ねるように揺れた尻尾と声は間違いなく彼女のものだった。普段なら距離を取られてしまうぐらいまで近寄ってようやくはっきりと見えるようになった彼女は、いつも通りのすまし顔でこちらに視線を向けていた。ただひとつ、鼻先が赤くなっていることを除けば、だが。
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