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    rin_sd07

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    仮面を被ったヒーローが、自分を思い出す話。

    #シャソニ
    chasonny

    無題ソニックは、みんなに愛されている。


    ソニックは、みんなのヒーローである。


    ソニックは、弱さを見せない。

    ソニックは。
    ...言葉が出てこなかった。


    「ソニック」とは、誰?






    「君、最近眠れてないだろう。」

    声をかけられて、現実に引き戻される。思考回路は鈍く、聞こえて来た声を処理するのに時間がかかる。
    最近、寝たのはいつだろう。思い出そうとしたが、言葉のほうが先についてでた。

    「Umm.いつだったかな...お前が毎晩寝かせてくれないから―」

    「茶化すな。」

    「ハイハイ、俺が悪かったよ。」

    両手を上げて反省しているかのように、ポーズを取る。舌打ちしているのが聞こえるが、いつものことだ。
    この部屋の空気にも飽きた。旅にでるのもいいかもしれない。

    「とりあえず、ここ最近じゃないか?なんだかんだ忙しかったし。」

    確か...どこかに出かけて、トラブルに巻き込まれたことは、二度や三度あった気がする。
    が、不眠に関係あるかと言われると頭に疑問符が浮かぶ。

    「...…。」

    「聞いといてだんまりは、ずるだろ。」

    無言で席を立ち、出かける準備を始めたシャドウが、背中越しに話しかけてくる。

    「...ここ最近なら、一過性のものだろう。チリドッグでも食ってさっさと寝るんだな。」

    「まったく、お前って...そういうとこ不器用だよな。」

    「少しでも理解したなら、その目の下のクマをなくす努力をしろ。」

    カオスコントロールと声が聞こえた瞬間、シャドウは消えた。
    任務があるとは聞いていたので、当分この家には戻ってこないだろう。

    「まぁ、可愛いダーリンの言う事だし、メシでも食べるか...。」

    肩をすくめながら、チリドッグのストックがあるか確認する。確か、昨日か一昨日に買ってきた分がこの辺に...。
    足がよろめいて、世界が回る。
    ぎりぎりのところでテーブルに手をつき、倒れるのを防いだ。

    「Oops! 完全にヤバイな...これ…。」

    座り込んで、深呼吸をする。
    心臓の音が聞こえる、少し速い。頭もまだクラクラする。
    落ち着くまで、動かないことにした。することがないと、鈍い頭の中でも、思考が駆け巡る。
    いつからだろう、この家の居心地がいいと思ったのは。
    いつからだろう、ヒーローの仮面を被り始めたのは。
    いつのまにか…仮面が外せなくなった。
    耳鳴りがする。そのうち何も聞こえなくなって…。


    ―...い!...しっかり...!―


    ―目を覚ませ!ソニック!―


    弾かれるように体を起こし、また視界が揺れる。

    「っ!無理をするな、君は倒れてたんだぞ。」

    よろけた体を、シャドウに支えられた。その表情と声色は本気で焦って心配しているようで、すこしこそばゆい。
    床に座り込んだところまでは覚えているが、目が覚めた場所はベッドになっている。
    倒れていた、とシャドウが言うのだからここまで運んでもらったのだろう。

    「...Thanks Shadow.」

    「...らしくないな。」

    そう言ったシャドウの顔は、少しだけ安堵の表情を見せていた。
    俺は、内心ほっとする。

    「Ha. 言うじゃないか。」

    それ以上は何も言わなかった。もしかしたら、言えなかったのかもしれない。
    言えばまた、いつもと変わらないのに言えなかった。

    二人とも何も言わずに時が流れる。お互い俯いて、目を合わせることもしなかった。


    しばらくして、ふわりと両手が重ねられる。
    指先に伝わる温もりは、ほんの少しだけ震えていて―それでも、シャドウはその手を離さなかった。

    ふぅ…。と息を吐き、シャドウが言葉を紡ぐ。


    「...君は、ソニックだ。ただ、走ることが好きなだけの、ソニック・ザ・ヘッジホッグだ。」

    「ヒーローでもなんでもない、ただのソニックなんだ。」

    ただ、走ることが好きなだけ。自分が何者か、思い出すには充分過ぎた。
    思い出させてくれたのは、シャドウだった。

    「何も言わなくていい。君は、僕の肩を借りているだけでいいんだ。」

    「昔、君が同じようにしてくれただろう?」

    外せなくなっていた仮面は―もう、ない。
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