「あちゃー、関東直撃だ」
沢北が夜のニュースを見ながら、やや大袈裟に嘆いた。恐らく、台風の話だ。一昨日までは関東からやや逸れる予報だったが、急に進路変更をした台風は、見事に関東を直撃していくようだ。
「温帯低気圧に変わらないピョン?」
「変わらないどころか、威力増し増しって感じ」
中部地方をゆっくり北上している台風は、生中継でリポートしている女性キャスターを吹き飛ばす勢いで、激しい風を吹かせていた。
そろそろ連絡が来るだろう。そう思った瞬間に、俺と沢北の携帯電話が同時に振動した。
「大学からだ。お疲れ様です、沢北です」
余所行きの声を出した沢北が、携帯を持って自室に引っ込んだのを見届けて、携帯の画面に表示されているチームメイトの名前を確認して、通話ボタンを押した。
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