箱庭わたしがこの屋敷に雇われたのは、半年前。
高給だが、条件はひとつ。
「外との接触は絶つこと」だった。
屋敷は街の外れ、森の中。高い塀に囲まれ、鉄の門は常に鍵がかかっている。
最初に違和感を覚えたのは、あの方――ご婦人、いや、奥様の姿だった。
お綺麗で、穏やかで、常に微笑みを称えているお方。
けれども、その目の奥には、何かが沈んでいるように見えて仕方なかった。
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ある日、朝の紅茶をお持ちした時のこと。
リチャード様がすでに彼女の傍にいらして、肩を抱くようにして言った。
「姉さんは、ずっと僕のそばにいてくれるよね?」
「ええ。もちろんよ、リチャード」
それは、答えではなく呪文のようだった。
そう唱えれば災いは訪れない。
そんな“祈り”のような声音。
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