第1話 出会ッチャッタネ、ヒジカタさん1彼と出会ったのは、蕎麦屋でバイトしていた時のこと。俺は、そこらにいくらでもいるごく普通の大学生で、生活費のために週4でバイトしていた。何不自由なく大学生活を歩んでいたはずなのに、彼が現れてから俺の人生が少しずつ歪んでいったのだ。
彼と出会った時のことは覚えている。それほどまでに、これまでの人生の中でも強烈だったからだ。
飲食店ではどこも忙しくなる昼時。バイト先の蕎麦屋も例外なく、お客の出入りが激しく、バタバタと俺は走り回っていた。
ガラッと扉が開いた音がして、反射的に「いらっしゃいませー」と言う。「今、カウンターしか……」と、席の案内をしようと顔を上げたら、扉を開けた体勢のまま俺のことを凝視している男がいた。
「あのー、お席なんですが」
「近藤さん……やっと、やっと会えたな」
と、男は嬉しそうに俺の名を呼んだ。
どういう意味だろうか。俺は正直ゾッとした。
名前、なんで知ってるんだろう?てか、会えたってなんだ?
本能的だろうか、俺は一歩後ろに下がった。それに男も気付いたのか、ハッとして「いや、すまない。1人だからカウンターでいい」と気まずそうに目をそらして言った。
なんだかそれが寂しそうに俺は見えた。掃除し終えたカウンターに男を案内し、こっそりと観察する。