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    もりひつじ

    @morihituj1
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    もりひつじ

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    だいぶ昔の供養

    ネコとキツネーーー
    カチリ、ソーサーにカップを静かに置く。底に残る茶葉のカスを眺めながら時間が流れるのに身を任せていた。

    ふと玄関の外に気配を感じる。
    ...どうやら人間でもない、招かざる客が来たようだ。
    清らかな鈴の音と祭囃子の音を響かせて開く前方の扉に目を向ける。

    「__ここはずいぶん生臭いところだの」

    小さな体に大きな獣の耳と尾を携えた少女が年に合わない老人口調でぽつり呟く。

    「...これは驚いた。珍しいお客様が来たもんだ。」
    「いやはや!まちごうて変なとこに繋がってしまったようでな!こんなとこに来たくて来たわけではないからの!」

    獣がケンケン騒ぎ立てる。よくもまァ口が回るもんだ。実力は未知数故に迂闊に手は出せないし、部屋を滅茶苦茶にされるのはごめんだ。

    「かか、そんな目で妾を見るでない。こちの方が年下でもあるんじゃぞ?そなた、外つ世の者じゃろ、こちらは手さえ出されなければいいだけの話じゃて、じゃ、お暇するかね。」
    「...そう」
    「...妾、別のところに行きたいんじゃけど...開かんな...」
    「...嘘だろう?」

    思わず感情を表にしてそう言ってしまう。獣とは気が合わないんだけれど。まさか私をおちょくっているのか?
    足音を立てて扉の前へ立つ。横に並ぶとほんとに小さいなこの獣。そんなことを考えながらドアノブを捻るも、ガチリと虚しく音を立てて途中で止まり、扉を開けることは出来なかった。

    元々この空間は私が用意し、意のままに操ることが出来る。様々な場所に扉を繋げて茶菓子や画材を買ったりしているのだが...しかしたまにあるのだ。私の小さな城は勝手に動く。予想外に消える扉、増える階層、移動する部屋。原因は正直私にもわかっていないが、特に困ることもないので放置していたが...これは困った。
    なるほど。今までは人間を閉じ込めて反応を楽しんでいたが、こっち側の気持ちがよくわかる。知りたくもなかったが。

    「いやはや、これは珍しい。付喪擬きか。」

    ぬるりと滑るような気配が耳元の背後で聞こえた。思わず本体を出して攻撃してしまうも、当たる感覚は無い。

    「かか、怖や怖や。この背の丈じゃ、妾の声は聞き辛かろうて。」
    「...君には重力が働かないみたいだね?」
    「我らはそなたらと違って存在が曖昧じゃからの。それらしい事は一通りできるもんじゃ。その分吹けば飛ぶ儚い生きものよ。」

    ふわふわと浮遊する獣は笑ってそう告げた。本当に姦しい存在である。

    「...そなたらの気配と我らの気配が混じっておるの。恐らく鬼角のあの子の影響か。」
    「は?」
    「たなかじゃ、たなか。今はわからんが角があるからの。そんなことよりこんなぷりてぃな幼子に何て声を出すんじゃ。泣いてしまうのう...」

    ヨヨヨ...とわざとらしい泣き真似を無視して記憶を思い起こす。ああ。あの厄介なお気に入りか。

    「まぁ元はそなたが与えたもうた命。悪いことは...今してるのう!きっとかまって欲しいんじゃろ。知らんけどな。」

    面倒くささが身を乗り出してきたが、ここは私のお気に入りの城。今思えば気まぐれで外出先が異なる時はいつも名店やら素晴らしい景色が拡がっている。それを些か壊してしまう、というのは勿体ない。
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