あんなに焦がれた家族の形が、こんなものかよ、と思った。
何も生きていないみたいに静かな時と、嵐の中みたいにうるさい時の差が激しい部屋で俺は寝ていた。俺にとってあの場所は早いうちから寝起きするだけの場所だった。居たくなかった。母親の目に俺の姿は映っていなくて、そこにいたのはあいつが考えた都合のいい架空の「息子」。あんなのはハナから居ないより酷いもんだった。逆に言うなら、そのおかげで俺はさっさと諦めることができた。ああ、やっぱり家族なんかいない方がマシなんだってな。
だから俺は今度こそお前とは完全に分かり合えねえと思ったんだ。母親に連れてこられたお前の、情けない、へつらうような不細工な笑い顔を見た瞬間に、悟った。「やっぱり」と。
1410