現パロジャンハン⑥ オーバーサイズのブルゾンを羽織った、昨日とはえらく雰囲気の違う若い男はIDカードを手に掲げて聞いた。「入館したいんですけど。これ、社員証」
「……ああ」
リヴァイは社員証を確認する。✕✕課、ジャン・キルシュタイン。
それから男はIDカードを機械に読み取らせて、「すぐ戻ります」と館内に向かった。足早に入館していくジャンの背中を黙視しながら、自分の中に沸き上がる説明しがたい感情もリヴァイは確認する。
男がすぐにパタパタと小走りで戻ってきた。「ありがとうございました」とか言いながら。手には女物のコート、バッグ。バッグからはノートパソコンが覗いている。それでリヴァイは思い知る。ああこいつらは本当に『そういう仲』なんだなと。女が置いていった忘れ物を取りに戻って来た若い男。健気なモンじゃねぇか。
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