御安眠妨害 その夜、ふと目を覚ますと、腕の中に主が居なかった。少しでも主が動いたら起きるようにしていたのに。少し焦って上体を起こすと、主はベッドの足元に座り込んで月を見上げていた。
「主様…どうかしたのかい?」
返事は無い。
「主様…?」
近付いて、そっと肩に触れる。動く事無く、硝子玉の瞳は窓の外の月を映していた。
「主様、眠れないのかい?」
そっと抱き寄せ、あやすように撫でる。
「誰か他の執事を呼んでこようか」
「…いい、別に、大丈夫。寝てて。」
「私は主様がゆっくりと眠れる様にここに居るんだよ」
見ると、手元のタオルが血に染まっていた。
「…鼻血かな?」
「うん」
「起こしてくれていいんだよ…」
「せっかく寝てるのに、悪いから」
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