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    hmNJsan

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    hmNJsan

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    ボイドラAssembleの後くらい、まだチーム名がない頃の三人(🃏🔪中心)の捏造話

    (主に🥽のloreで)端々からやべー企業感が滲み出てるA.S.H.なんですが、現在の彼らが闇に脅かされていて欲しくないよ〜!!という一心で、何とかなってる体にしたかった話です。全部捏造です。(現在に繋がるので当然ハピエンです)

    いや🃏🔪の過去loreが毎月出るから全然ひっくり返る可能性あるんだけど…

    #krisis

    暴れろ、正義の君よベンタクロウ・ブリンガー。
    利他主義の頂点、真の美徳の規範であるこの人物は、その評価に対しこう呼ばれる。
    「Tyrant(暴君)」と。
    現在彼は戦闘代行企業A.S.H.所属のヒーローとして活動しているが、相も変わらず続く二つ名は「Unstoppable Tyrant(止められぬ暴君)」である。
    何が彼をそう呼ばせる?
    彼の正義はどこにある?

    これは、彼の二つ名に纏わる伝承のひとつだ。



    ※全て捏造の話です
    ※現状(2025/09)出ている情報から作成しております。後に開示される情報との矛盾点は何卒お許しください
    ※再度申し上げますが全て捏造です。実際の人物に関わりますので、くれぐれも口外にご注意ください。




    「遅いよベンタクロウ、また迷子?」
    「悪い、今日はその……迷ってたわけじゃない。けど」
    「いいから、時間通りに来る。私たちに余裕なんかありませんよ」
    「でも! 横断歩道を渡れないお年寄りを見捨てられるかよ!」
    「ハイハイ、ほんとお人好しだね」

    ひょんなことから遠い島国への派遣部隊となり、名残惜しくも帰還して尚、A.S.H.からのチーム扱いが続いているこの三人。
    島国での任務中はそれなりに和やかな時間もあったが、いざ帰還すればどこか浮かれていたところもあったのかもしれない。ウィルソンはやはりどこか不満げで、ヴェザリウスはため息と共に急いてばかり。ベンタクロウはといえば、未だに島国での仲良しタイムを取り戻したい一心なのだが。

    そう、ベンタクロウはあくまでも、この愛すべきチームメイトたちとの関係を良好にしていたいだけだ。チーム名すらろくに決まっていないのに何を、と思われるかもしれないが、それでも彼らをチーム扱いしているのは他でもないA.S.H.なのだ。上の意向がそうであるならば、所属ヒーローである三人は"我々はチームである"と言うしかないわけで。チームだ、とする以上は、良好な関係でありたい。ただそれだけなのだ。

    だからこそ、過ぎ行く日々にベンタクロウは二人を見た。
    チームとして良好になるためには、支え合うことが大切だ。支えるには、どこが脆いのかを見つけなくてはならない。そうして互いに脆い部分を補い合って、チームとは完成するのだから。

    どこか刺々しい空気の中、ベンタクロウは見続けた。見続けた結果、ある違和感に辿り着いた。



    まずは、A.S.H.上層階近くでヴェザリウスとすれ違った時だった。ベンタクロウは特段ここに用があった訳ではなく、ただ来たことがないな、と興味本位でうろついているだけだった。対してヴェザリウスは上層階から出てきた帰りだったらしい。
    「やあ、奇遇だな」なんて声をかけたが、返答がなかった。一瞥もせず、そのままベンタクロウの来た方向へ歩む背中。
    ……妙だった。いくらヴェザリウスがせっかちな不機嫌屋だったとしても、挨拶を無視したことはこれまで一度もない。「Hey、大丈夫か、」と後を追って心配してやって、初めてヴェザリウスと目が合う。
    どこかぼんやりとした瞳に懸念と心配が募る。そんな彼がやっと口を開いたかと思えば、

    「君は……あぁ、ベンタクロウ、だね」
    ……なんて言うので、思わず「何言ってんだ?」と返す他ない。

    「まさかとは思うが、俺の顔忘れたか?」
    「いや? ちょっと……何でもない。気にしないで」
    それに「じゃあね」を付け加えて、今度こそ去る背中。廊下に置いてけぼりにされたベンタクロウは、なんだよ今の……と困惑するばかり。


    次に、ウィルソンだった。こちらは分かりやすいもので、やたらと病欠が多い。ヴェザリウスは「仕方ないね」と流すので、ベンタクロウとしては「俺の遅刻はほんの少しでも大層詰めるのに?」と若干不服だったのだが。とはいえヴェザリウスの言う通り、病欠は仕方がない。それは分かっている。ただ、頻度がとても戦闘職のそれとは思えない。

    たまに現場で一緒になった時は、至って健康に見えるのだが。ただ戦闘がひと段落したところで、息を切らせてそそくさと帰還してしまうこともあった。やっぱりどこか悪いんだろうか、と、食事に誘ってみるなどしてみたかったベンタクロウはややしょんぼりしていた。

    そんな印象が、違和感に覆る決定的な日があった。その日のウィルソンは戦闘後も落ち着いていて、今日も今日とてチーム扱いのトリオでやいのやいのと話していたのだが。急にどこか居心地悪そうにしたかと思ったら、「ちょっとごめん」と場を離れる。お手洗いにでも行くのか? とも思ったが、ベンタクロウは後を追ってみることにした。「はしたないよ」なんて声が後ろからしたが、ベンタクロウは目の前の疑問を明かしたい一心だった。
    ウィルソンの隠れた物陰に足を踏み入れて、目にしたのは……彼の持つ注射器だった。ヴェザリウスのポーションとも異なるそれは、ウィルソンの手にしっかと握られ。今まさに打とうとしていましたという様相で。
    当然喧嘩になった。あらぬ誤解を生む注射器であることには違いなかったし、それにウィルソンも「これはA.S.H.公認のものだ」と言い返し。じゃあなんでわざわざ隠れて打つんだ、なんてベンタクロウの指摘にはバツが悪いようで、「どうでもいいだろ!」と吐き捨てて逃げていった。
    後を追おうとしたのだが、ヴェザリウスが何も言わず止めた。大人しく留まったベンタクロウに、ヴェザリウスは言う。

    「キミだって、気付いてるはずでしょう」
    「私たちは駒だ。しろと言われたらするだけの」
    「そうする内に秘密のひとつやふたつ抱えたっておかしくない」
    「それを暴いて、どうするの。首を取ったように真実を見せびらかすつもり?」
    「どちらにせよやめておきなよ」
    「悪いことは言わない」

    正論だ。その場ではベンタクロウも引き下がった。(逃げたはいいもののそのまま帰るわけにもいかず結局戻ってきた)ウィルソンに謝罪もして、三人はそれぞれの日々に戻る。


    ただ、ベンタクロウはどうにも許せなかった。


    彼はシンプルであることを好む。誰が腹のうちに何を抱えていようが、それは見ないふりをすればいいことだ。多くの場合彼だってそうする。
    しかし、今回に関しては実害が及んでいる。
    ユウ・Q・ウィルソンという人物の経歴、病欠、注射器、出入りしていれば自然と届く怪しいウワサ。
    ベンタクロウは見ていた。見れば見るほど点と点が線となる。変なこじつけにしてはできすぎている。
    謎多き男ヴェザリウス・バンデージ。魔石の使い手であるメディック。それにしては、という違和感。上層階にいたあの日のこと。
    特にボロが出ているのはウィルソンの方だったが、廊下で見たヴェザリウスのことも同等に気になっていた。いざ戦地であの状態になられたら困る。それは実害でしかない。違うだろうか?

    結びついた線の先にあったのはとあるラボだった。そういえばかつて頼まれた暗殺任務とやらも、このラボの関連者じゃなかったか。

    「チームになれって言うくせに、それを内側から壊してるのか? ふざけてるな」



    ベンタクロウ・ブリンガー。
    利他主義の頂点、真の美徳の規範であるこの人物は、その評価に対しこう呼ばれる。
    「Tyrant(暴君)」と。

    何が彼をそう呼ばせる?
    一度守ると決めたものを、手段を選ばず立場すら覆してでも守ろうとする姿勢こそが。

    彼の正義はどこにある?
    あくまでも、守ると決めた対象にのみ。
    それが街ひとつだろうが、人ひとりだろうが。


    相棒であるクロコッコのデータ同期を遮断し、宵闇に身を隠した。警備も立場も、暴君の前には意味を成さない。



    とにかく、彼はこれまでの経験を活かし、完璧な隠密行動で上層階へと侵入した。セキュリティの突破だとかそういったところについて、彼は詳しく語りなどしない。なんてったってこれまでそうしてやってきただけなのだから。
    そうして目的の研究室に入るなり、当然中の職員に銃を向けられる。四方八方に見える銃口に、されど億さず。「何を考えてるのか確かめに来ただけだ」と言い放つ。
    その闇を舞い、ベンタクロウの元へ戻ってくるクロコッコ。小さな体躯とA.S.H.制御下にないことを活かし、この場において重要な書類をスキャンし持ち帰って来たのだ。
    マスク右目側の液晶でその内容を軽く確認し、ベンタクロウはハ、と笑い飛ばした。愛しい仲間の実験記録と、それを明らかに改ざんしたらしき上層部への報告書。このラボが数年前に提携した、元は別組織の研究者たちによるものであると示す書類。その他、名も知らぬ同胞の改ざんされた報告書たち。

    「戦闘員を一人でも多く潰したいみたいだな」
    「本気でやってるならちょっと考え直した方がいいぜ」

    侵入が通報され、やっと部屋前のランプとサイレンが緊急事態を報せる。おっせぇ、とボヤく彼に、手の震えた職員がとうとう発砲した。羽織るコートの襟を掠めたそれは、彼らが戦闘職でないことを物語る。
    自慢の拳を手のひらに打ち鳴らし、ヒーローはおよそらしからぬ笑みを浮かべた。

    「警備のヤツらが来る前に制圧してやる」
    「安心しろよ、殺したりしねぇから」

    わあ、と誰の声かも分からぬ悲鳴でラボが埋まる中、胸ぐらを掴み上げられた職員が抗議する。「データを手に入れたらあとは突き出せばいい」「なぜこちらを攻撃する」と。
    それに対して、顔色ひとつ変えずに。
    「仲間を傷つけられた分だ」
    的確に拳を振り抜いた。





    警備スタッフが制止のためテーザー銃を撃つ。黒の男はするりとかわして、代わりに両手を上げた。ラボにいた職員は全員見事に伸びており、その場に立っていたのは男一人だ。男は手こそ上げるが、その態度は非常に不遜で。

    「見れば分かるだろ」
    「……同行を」
    「分かってる。データも揃えた。感謝しろよな」

    銃口を向けたままの警備スタッフ数人と共に、男はラボの外へ。共に居た小型生態ユニットAIはスタッフの端末にスキャンデータを送信するようだった。ものの数秒も立たぬうちに同期が終わると、スタッフにより電源を切られる。





    次にクロコッコの電源が入ったのは、留置所の一室だった。大人しく座っていたベンタクロウの元に投げ込まれたらしい。
    ラボへの侵入、襲撃からどれほど時間が経過したのか。クロコッコがそれを認識する間に、ここへAIを持ってきたスタッフはこう言った。
    「やり方はともかく、期待通りの成果だ」


    ……ベンタクロウは、何も依頼を受けてラボに突入したわけではない。ただA.S.H.が彼を雇った目論見──的確な侵入と暗殺、最新AIの盗難を働いた暴君なら、被害を受ける仲間越しにA.S.H.内部の反軍を見つけ仕留められるのでは。というそれが、見事に果たされただけ。

    それを彼自身もようやく理解して、片頬を釣り上げ笑い飛ばした。
    「俺なんかに入り込まれるセキュリティ、ガキの秘密基地同然だ。しっかり見直ししておけよ」




    ──A.S.H.の技術をおよそ一世紀超も進めた功績のほとんどは、「創造の宝石」にあると言っていい。
    ヴェザリウスにとって最早行き場のない感情を振り回すだけの武器に成り下がったその魔石は、研究者なら誰もが欲しがる奇跡の魔法だ。
    ただ厄介なことに、宝石は所有者にしかその力を発揮しない。故にA.S.H.はヴェザリウスごとこの宝石を抱え込み、彼に依頼して必要な素材を生成させていた。
    創造の力を求める意味を失ったヴェザリウスにとって、それは最早どうでもいいことだった。
    だが、言いなりに残された日々を消費する中で、魔石を使い続ける事には危機感を覚えてもいた。創造の力を短時間で引き出せば引き出すほど、意識が朦朧とし、己が己でなくなっていくような感覚に陥るのだ。大抵は意識が完全に落ちる前に依頼分が終了するのだが、部屋に戻った記憶がないままベッドに倒れていたこともあった。しかし、もしそれで自分が終わるのなら、それはそれで……とも、考えていた。

    ある日いつものように、創造の魔石を使うため上層の極秘ルームに入って、彼は気づく。
    いつもとスタッフの顔ぶれが違う。それに頼まれる生成物も極端に少ない。加えて、呆気なく終わってしまえばこの言葉。
    「以降は生成数を減らし、頻度も見直します」
    「以前から意識レベルの低下が見られていたため、今後はそれらの関係性についても調査を」

    今までそんな事気にもしなかったくせに。さすがに「珍しい、方針転換なんて」と言及せずにはいられない。
    「上層部の意見が変わったの?」
    「……詳細については、お答えできかねます」
    「そう」
    「……ただ」

    素っ気ないヴェザリウスに、唯一以前からいたそのスタッフはため息をついて。

    「人事異動に機密の扱い、そんな苦労など知りもしない……暴君がいたもので」
    「……暴君?」

    ヴェザリウスはにわかに驚いて、しかし彼の中で何か合点がいったのか。それ以上何も言わなかったが、へぇ……とどこかを見上げていた。




    ──A.S.H.の技術は今や最先端。その開発のさまざまの中には、多くの観点から未だ公表に至らないものも多く存在する。そのうちのひとつと噂されるのが……人体強化薬。

    ウィルソンは偶然に偶然が重なり、その強化薬の被験体として密かに活動していた。
    とはいえ、開発中発展途上のそれは人体に変化を与える代償を抑えきれてはいなかった。副作用を抑制する鎮静剤も無いわけではなかったが、時に効きすぎ、時に効かない。一人部屋で鎮静剤を打った途端倒れたことも、副作用の酷い頭痛に半日以上苦しめられたこともあった。
    とはいえこれらは極秘の人体実験だ。悟られてはならない。現に、A.S.H.から謎のチーム活動を命じられるまで、ボロが出たことなどなかった。人と話し共にいる時間が増えてしまった結果、一度は何か疑われる状況下にまで陥ってしまったが。

    A.S.H.には多くのことを知られている。あの遠慮のない金髪怪力野郎にバレかけた事も伝わっているだろう。お叱りか、文字通り首が飛ぶか、と暗鬱とした気持ちでひっそりとラボのドアを叩く。……が、いつものラボの研究員が誰一人としていない。研究員の名前など知らないが、間違いなく全員別人だ。訪ねるラボを間違えたかとも思ったが、「引き継ぎはできておりますので」という言葉を疑うわけにもいかない。大人しく、知らない顔ぶれにいつもの検査を任せる。

    と思えば、普段と全く違う薬品が出された。副作用にはこちらを、と出されたものも、用途別に丁寧に分けられている。
    「……これまでの薬品は一部を削り一部に充てるものでした。方針を見直し、全体的な底上げを今後は目指します。そのため、まずはアンバランスな現状の改善を」
    「……待ってよ、どういう風の吹き回し?」
    「どうも何も、方針の変更です」
    「……そう」
    答えてはくれないのを察して、それ以上の詮索は避ける。どうせ逆らえない身だ。とはいえ、今後が楽になるならそれに越したことはない。
    ウィルソンの帰りの足取りは、普段よりいくらか軽かった。


    この建物には実は、ささやかな緑ある中庭が存在する。そこに埋もれるようにしてある小さなベンチに目を向けるのは、そんな心の余裕のある者だけだ。
    ウィルソンも、今日初めて中庭にベンチがあったことに気づいて……次いで、そこに座っている人がヴェザリウスであることに気づく。
    包帯オバケ野郎……とひっそり毒づいて中庭から離れようとしたが、「包帯がなんだって?」と呼び止められる。地獄耳、とさらに毒のある肩書きを付け加えて振り返れば、やはりヴェザリウスがこちらをまっすぐに見ている。

    「……〜っなんでわかるんだ!?」
    「へぇ、本当に言ってたの。テキトーに言ってみただけなのに」
    「は、お前、ハッタリってこと!?」
    「そうですよ。あなたも単純ですね」
    まんまと苛立ちに任せヴェザリウスの前に詰め寄ってしまっていたので、ウィルソンは何も言い返せない。ただただぎぃ〜……と悔しい顔をする他なく、目の前のヴェザリウスはその顔を見て鼻で笑うばかり。ますますムカついて何か言葉を発してやろうとも思ったが、視界の端に見覚えのある黒と金を見つけた。ヴェザリウスも気づいたようで、ベンタクロウを呼び止める。

    よう、と近づく巨体は、なんだか久しぶりに見る気がした。そういえば、ここ数日会っていない。何やら頬にガーゼも当てているし、激しい任務の後か? それにしては、あまりに軽傷ではあるが。

    「二人揃ってるなんて珍しいな」
    「そっちこそ。顔にガーゼなんて珍しい」
    「あぁ……これは、その、気にしないでくれ」
    「なんだよ、名誉の戦キズじゃないの?」
    「いや……いや? そうとも言う」
    「……上官を変に煽ってぶん殴られたとか」
    「は!?」

    煮え切らない様子だったベンタクロウが、ヴェザリウスの一言で声音を大きく変えた。ああ図星だ、とまだ付き合いの浅い二人でもわかる。

    「ちげぇよ! 俺にとっては名誉の一発だ!」
    「一発ってことはやっぱり殴られてんだ」
    「全くもう……血の気が多い」
    「お前ら俺をなんだと思って……!! いいか!? 俺はやるべきことをしたまでだ、ヒーローとしてな!!」
    「ハイハイ」

    ベンタクロウの怒りを軽く流すウィルソンに、静かに笑うヴェザリウス。何も変わらぬように見えて、空気の刺々しさは確かに消えている。中庭を吹き抜けた緑の風に、暴君は密かに、勝利を確信していた。
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