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    namagimo_twst

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    ぽいぴくに文章投稿が出来ると聞いて‼️
    ただの試し打ちなので、ほんと適当な部分で切ってます。

    「ジャミルが倒れた」──カリムにとって、その心を動揺させるには十分な一言だった。
     それは魔法史の授業の終わり、慌てた様子で駆け付けたアズールから伝えられたもので、気がつけば全力で駆け出していた。
    「っと……! 悪い、ホントごめん!」
     混雑した廊下を走るカリムは、その肩を見知らぬ寮生にぶつけてしまい、慌てて振り返りながらも足を止めることなどは出来ずに大声で謝罪する。その寮生が、倒れるような素振りもなくただ呆然とこちらを見ているだけであったのは不幸中の幸いだ。今のカリムには、誰かに手を差し伸べてやる余裕などなかったのだから。
    「ジャミル!」
     ガタンッ、と大きな音を立てて保健室のドアを開き、カリムはなだれ込むようにして入室する。その嵐のような騒々しさに、保健医は飛び上がらんばかりに驚いてから苦笑いで振り返った。
    「はは……アジーム君だね」
     膝に両手をついて肩を揺らし、ぜひぜひと掠れた喉を震わせながら、カリムは首筋の汗を右手で拭う。流れるほどでもないじっとりとしたそれは、霧吹きで吹き付けたように全身を包んで気持ちが悪い。
    「その、ジャミルは」
     カリムと目を合わせた保健医は、最初の苦笑いから表情を崩すことなく「そこのベッドにいるよ」と、一つだけ垂らされたカーテンのほうへと視線を向け、カリムもつられてそちらを見、歩みを進めた。
    「ジャミル?」
     日に焼けてうっすらと生成色に近くなっている布を引き、カリムはその奥を覗き込む。
     真白な壁とは正反対の黒く艶めいた髪は、朝見た時と変わらずきちんと結われていて、枕を背にベッドの上に腰掛けるように足を伸ばすジャミルは、若干驚いたような顔でこちらを見ていた。
    「ジャミル、起きてたか。具合はどうだ?」
     よろよろと、腰が抜けたかのようにカリムはベッドに縋り付いて、布団の上に投げ出されていたジャミルの手のひらを両手で握る。
     その様を見つめるジャミルの瞳には、未だに困惑の色が浮かんでいる気がしたが、きっとジャミルなら事態をすぐさま把握して呆れたような顔をするかもしれない。カリムにはなんとなく、そんな自信があった。
     あったのだけれど。
     カリムが包み込んだその手が僅かに揺れ、それが警戒と拒絶による反応であることに、気がついてしまった。
    「……ジャミル?」
     その名前を呼ばれたジャミルは、怪訝そうに眉を寄せる。
     それはまるで、カリムのことなど今日初めて会った見知らぬ他人であるかのような仕草で。
     もしやこれは、記憶を失くしているのではないか。
    「オレのこと、わかるか?」
     恐る恐る、その瞳を見つめる。怖かったのは、彼のユニーク魔法が洗脳の類だったからではない。ジャミルが、カリムとの十七年間を綺麗まるごと忘れてしまっている可能性が怖かった。
     僅か数ミリ、深みのあるブラックコーヒーに似た色の黒目が揺らいだ。それは、カリムが危惧していることに対する無言の肯定のように感じて、カリムは小さく息を飲む。
    「オレだぞ。カリムだ。カリム・アルアジーム。わからないか、ジャミル?」
     わからないかもしれない。ショックで記憶が抜け落ちる、だとか、何か魔法薬を被った可能性もある。詳しいことをアズールから聞くのを忘れた。思わず飛び出してしまったから。
     すり、とジャミルの手の甲を撫でる。少しでもいいから、思い出してくれれば。
    「カリム……?」
     いつもより少しだけ血色の悪いジャミルの唇が動いて、カリムの名前を呼ぶ。呼ぶというよりは、復唱のほうが近かったかもしれない。
     眉間に皺を寄せたままぶつぶつと何かを呟いているジャミルを見て、カリムは眉を下げて小さく笑った。あまり怖がらせてもよくない。
    「……やっぱり、忘れちゃってるか? ちょっと待っててくれ、いま詳しいことを先生に、」
     事態の重さを判断したカリムは、ジャミルの手を離してベッドにつくと、カーテンのほうへ顔を向けながらすぐさま立ち上がろうとした──が、右手首をジャミルに掴まれて、慌てて振り向いた。
    「え、なに」
    「カリム。わかるぞ」
     再び視線の合ったジャミルは、微笑んでいた。
    「わかるか!? よかった、大丈夫だったんだな」
    「ああ」
     カリムが、ジャミルに掴まれた右手首をその上から握り込むように左手で包むと、ジャミルはその手をそっと離して絡めとり、カリムの両手が自身に近づくように誘導する。
     そして、カリムが何かを考えるよりも先に、カリムの指先に優しくキスを落として、また微笑んだ。
    「忘れるわけがないだろう。一生守り抜くと決めた
    ご主人様……いや、“最愛の人”を、俺が忘れるわけがない」
    「……………………えっ」
     うっとりと、カリムを見つめて。ジャミルはたしかに、そう言った。
    「心配をかけてすまなかった。愛してる、カリム」
    「え……え、えええええええ!?」
    「カリムさん! …………はぁ、遅かったようですね」
     数秒後、カリムがその“事件”を理解したのと、オクタヴィネルのアズールが到着したのは、同時の事だった。
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    namagimo_twst

    BLANKぽいぴくに文章投稿が出来ると聞いて‼️
    ただの試し打ちなので、ほんと適当な部分で切ってます。
    「ジャミルが倒れた」──カリムにとって、その心を動揺させるには十分な一言だった。
     それは魔法史の授業の終わり、慌てた様子で駆け付けたアズールから伝えられたもので、気がつけば全力で駆け出していた。
    「っと……! 悪い、ホントごめん!」
     混雑した廊下を走るカリムは、その肩を見知らぬ寮生にぶつけてしまい、慌てて振り返りながらも足を止めることなどは出来ずに大声で謝罪する。その寮生が、倒れるような素振りもなくただ呆然とこちらを見ているだけであったのは不幸中の幸いだ。今のカリムには、誰かに手を差し伸べてやる余裕などなかったのだから。
    「ジャミル!」
     ガタンッ、と大きな音を立てて保健室のドアを開き、カリムはなだれ込むようにして入室する。その嵐のような騒々しさに、保健医は飛び上がらんばかりに驚いてから苦笑いで振り返った。
    「はは……アジーム君だね」
     膝に両手をついて肩を揺らし、ぜひぜひと掠れた喉を震わせながら、カリムは首筋の汗を右手で拭う。流れるほどでもないじっとりとしたそれは、霧吹きで吹き付けたように全身を包んで気持ちが悪い。
    「その、ジャミルは」
     カリムと目を合わせた保健医は、最初の苦笑 2074