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    kameyamakameta

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    kameyamakameta

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    フラシルが話をする話

    はなせないこの関係を続けて、今回で半年ほどになる。
    シルバーももう幾分かこなれてきて、緊張してはいるものの、寝床に上げて抱き寄せてやればくたりと体を預けてくれるようになった。
    余計な緊張はシルバー自身を疲れさせてしまうものだからないに越したことはない。このまますぐ先に進んでもいいが、もう少しスキンシップを図ってもいいなと思案しながら背鰭の辺りをさすってやっていると、シルバーが少し顔を上げて「…あの、さ」と少し強張った面持ちではなしかけてくる。
    おや、緊張しなくなったように見えていたのは気のせいだったかと認識を改めながら「どうした?」とできるだけ緊張させないように聞くと「ん、あのな、その…」と言葉を探している。
    ふむ、なんだろう?何かこの行為とは別の頼み事だろうか?こういう関係になっているからというわけではないが、自分に出来ることならしてやるつもりだ。
    そう言ってやるとシルバーは一瞬驚いて、その後泣きそうな顔になって「ち、ちがう…!」と首を振る。
    しまった、何か矜持を傷つけてしまっただろうか。
    「すまん、シルバー。俺は何か間違えたんだな。」
    許して欲しい、と鼻先を合わせると眼は伏せたままだが、すり、と擦り寄せて応えてはくれる。
    幾度かそうしているとようやく視線がこちらを向く。
    「…これ、好き。」
    「ん?そうか、それは良かった。」
    じゃあもう少ししようかという前にシルバーに「お前は?」と聞かれる。
    「俺か?俺も楽しいよ。」
    「本当に?」
    「ああ。」
    中身が無い自分が楽しいというのを疑うのは仕方ないし、実際誇大表現だとは思うが、嘘では無い。神経を逆立てずに済む触れ合いが、自分にとって大きな意味を持つのは確かだ。
    そういう意味を込めて頷くとシルバーも納得したようで二、三度頷いてから、
    「じゃ、じゃあ、このまま、話してもいいか?」
    と聞かれる。
    「ふふ、話しづらくないか?」
    「んん、いい、へーき…」
    鼻先付き合わせて話をするなんてやりづらいだろうと思うが、シルバーがいいと言うなら好きにさせよう。
    なら構わないぞ、と促すと「じゃあ、あの、あのな…」と話し始める。
    内容は取り止めもなく、普段の副官との生活、あまり尊敬出来ない爆弾隊の先輩のこと、書類の処理が少し上手くなってきた気がすること、サンダーに揶揄われたこと、インクタンク部隊の整備を見せてもらったこと…
    日常の小さな話をゆっくりと、自分が聞いているかを確認しながら話すシルバーに、頷き、驚き、褒めて、苦笑してと反応して見せる。
    そうしてひとしきり話したところでシルバーが黙り込んでしまったので「おや、楽しい話はおしまいか?」と聞けば一言「…無駄だと思うか?」と返ってくる。
    「無駄?いいや、そんな風には思わなかったが…」
    そう思わせる態度をとってしまっただろうか?と聞くと首を振られる。
    ではどういう意味だろうと首を傾げているとぼそりと「無駄な話って、嫌うだろ。…優秀なやつほど」
    「ああ、確かにそういう奴もいるな。」
    同じ作戦で組んだ隊長や幹部を思い出して、確かにそういうこともあったと頷く。
    「…すまん、それとお前が話してくれたことを俺が無駄だと思うことは、どう繋がるんだ…?」
    俺にも分かるように話してくれると助かるんだが…と聞けば、んん…と少し弱ったような声で呻いてから「お前、あんまり外で俺と話さないようにしてるだろ。」
    「そうだな。その関係が万が一でもバレたらお前がどう思われるか分からない。」
    以前にもそう話したな。と言えばわかってる、と返ってくる。
    「…けど、それ、やだ…」
    「え?」
    「分かってる、し、しないけど…やだ。」
    ぐす、と鼻をすする音がする。
    「シルバー?」
    「お前、は、ぜんぜん、やじゃない、だろ…?おれは、やだ…。もっと、そとでも、おまえとはなしたり、したい…。でも、おれだけ…。おまえ、こっちみねぇし…。おればっかり、むだな、こと…」
    ひぐ、としゃくりあげる音で後が聞き取れない。
    ぽろぽろと泣くシルバーを慌てて抱きしめると拒絶されることはなく大人しく鰭の中に収まる。
    「シルバーあのな、」
    「ほん、とは、むだって、おもってんのかなって、おも、て、じゃあ、おもいきり、むだな、はなし、して、そしたら、いやがる、かも、ておもった、けど、おまえ、ふつーだし、き、たい、する、やだ、おればっかり…」
    「シルバー。」
    「う、う、な、に…?」
    「お前、可愛いなぁ。」
    「は?」
    「俺と話したかったんだろう?それだけでそんな悩んで。」
    執務室で仕事してるときは誰もいないから訪ねてくれれば話せると思う、と言えば一瞬パッと顔を輝かせたあとぎゅ、と顔を顰める。
    「おや、俺の稚魚殿はご不満か。」
    「話に来てくれれば、なのかよ。話に来い、じゃ無くて。」
    むぅ、とむくれて言うので苦笑する。
    「いや、優秀な最年小隊長の貴重な無駄話を賜るのに呼びつけるのはなぁ?」
    「ふーん?分かってるな。仕方ない、俺の貴重な無駄話をどーしても聞きたいって言うなら時間作って話に行ってやる。」
    まだ鼻を啜りながら胸を張って見せるから、「恐縮です」とわざと慇懃に返せは「恐縮って一個も思ってねぇ顔してる!」と言って鰭で胸元をペシペシと叩かれる。
    「さて、今日はどうする?まだ楽しいおしゃべりを続けるか」
    「お前次第だな。暇になったらまた話し始めるかも。」
    「ふふ、優秀な最年少隊長殿の暇つぶしになる程度には努力しよう」

    次の日、執務室を訪ねてくれたシルバーに用意した椅子を勧めてやる。
    「わざわざ用意してくれたのか?へへ、長居してもいいって解釈するぞ?」
    「いや、昨日負担を掛けた分くらいは休めるようにしてやろうと思ってな。」
    「なっ、ば、ばーか!お前のそゆとこ本当にどうかと思うぞ!!」
    そのまま俺の嫌いなところをつらつらと述べるシルバーの話に相槌を打ちながら仕事をする。
    これはきっと自分の新たな、放し難い習慣になるんだろうという確信に苦笑した。
    いつか失うと、分かっているのにな。
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