手持花火、どっしりとした入道雲、白くて飛行機の残骸が散らばった砂浜、日が落ちて黒く見える海。
目の前で広がる光景は、あたしにとっての今年の夏の情景ランキング上位に入る。手に持った花火がシュワシュワと弾けて手元を明るくするのを、暗闇なのを良いことに真顔で見つめる。
「ユキ、この炎色反応に使われている素材は?」
「えっ、えっと、緑色だから……バリウム?」
「そう、正解。もう少し詳しく言うとバリウム化合物」
「よ、よがったぁ、さっき教わったばっかですから、間違えてたらどうしようかと……」
「………別に、間違えてたらもう一度教えるだけだから」
「ゆ、ユミルさま〜!!」
甘すぎる。あたしの前方約2メートル付近で花火片手にいちゃ、じゃなかった。楽しげにしている二人の空気が花火の煙に負けないくらいピンク色で、正直胸焼けがしそうだ。
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