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    sara_rkmj2222

    @sara_rkmj2222
    らく魔女の絵とか文とか投げます。多分進捗多めかも。

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    sara_rkmj2222

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    #落書き
    graffiti

    ___人は恋をすると世界がひっくり返ってしまうのだ。それはもう些細なことで胸をときめかせ、足取りは酩酊する。恋とは薬にも、毒にもなってしまう、そんな厄介なものなのだ。





    「よし、寝癖なし、制服にしわなし、靴の汚れなし、手入れよし!」
     爽やかな早朝の風が銀の城のあたしの部屋にするりと忍び寄る。初等部の頃より幾分か片付けがされている部屋で、あたしは中等部の制服を身にまとって大きな姿見の前で一つ一つ確認していた。何をって?今日のあたしの乙女の身だしなみ的なやつだ。
     中等部の制服は初等部の制服よりも少し大人っぽくて可愛らしい。少しでもあたしに似合って見えるように毎日ヘアアレンジをしたりケアをしたり、初等部の頃のあたしなら絶対にしないようなことを飽きずに頑張っている。
     それもこれも全てはアイツに少しでも可愛いと思わせるため!やればできる子天才魔女のフウカちゃんはこれくらいの努力はチョチョイのチョイよ!
     …………前置きが長くなってしまった。簡潔に言おう。あたしはいまチトセに恋をしている。終了。
     

     



     パラパラと捲っていた教科書に、恋について書かれていたけれど。なるほど、恋とは想像の数百倍も厄介なものだと、あたしはいま身を持って体感している。
    (いつもより早く来ちゃった……あ~ッどうしよどうしよこれ変だって思われないよね!?)
     さっきからさわさわと忙しなく髪の結び目へ伸ばした手をなんだか気恥ずかしく感じながら、頭にはぽわ〜っと幼なじみの顔が浮かんだ。
     何がどうして恋なんぞしてしまったのか。数週間前、色々あってチトセと頼まれ事をこなしていたんだけど、あたしのうっかりは中等部にあがっても特に治らず、まあお察しの通りうっかり足を踏み外してしまったのだ、階段で。
     ぐらっと傾く自分の体とか、内臓が浮かぶような心地とか、視界に映る焦った顔の幼なじみだとかを見ながらあー、そういえば今日は無限戦隊再放送の日だったなー、なんて走馬灯より先に馬鹿な思考でいっぱいになっていた。我が生涯に何片もの悔いあり……!とぐっと奥歯を噛み締めてせめて頭を守ろうとして……。なのに全然衝撃その他諸々がやって来ない。
     これはおかしいぞ、と思って目を開けたら目の前にチトセのドアップ。あたしは驚きすぎてカッチコチに凍った。そう、まるでチトセが時の魔法を使ったときみたいな…………時の魔法?
    「チトセ、あんたいま魔法使ってた?」
    「使った」
    「え、ほんと?あたし何も分かんなかったわ……意識飛ばしてたかも」
    「まあお前自体にかけてたし……術中の記憶がないのは仕方ないことだろ」
    「ふーん、なるほどね」
    「お前絶対何がなんだか分かってねーだろ」
     失礼な。こちとら中等部に上がってそれなりに成長を重ねた未来の天才魔女様ですけど?
     異を唱えてやろうとしたけどチトセは忙しなくあたしを眺めている。あたしというよりあたしの体?部位?
    「チトセのえっち!」
    「は!!?ちげーよ!!!お前に怪我ないか見てやってんだろうが!!!」
    「とか言っちゃって〜、クラスの女子諸君に注意喚起しておきますかね、あたし紳士だから」
    「だからちげーって、止めろよマジで」
     顔を真っ赤にさせてあたしに怒るチトセを見て何だかホッとした。最近のチトセは初等部の頃よりも何だかシュッ?シャッ?として、まあなんというか、カッコよくなって、あたしに対する態度も何だか前より優しいというか、なんか、あれ、女の子扱いされてる?って思うことが増えて。別人になってしまったみたいで少し怖かったから。どうしてそうなったのか理解できなくて、分からなくて不安になっていたから。
    「…………」
    「あ?なに急に黙ってんだよ。………もしかして怪我してるのか?足とか」
     そういってしゃがみこんであたしの足首の具合を確かめようとしてくるものだから流石にちょっと本気でキレた。あたしの美脚でチトセのふくらはぎあたりを蹴る。
    「うおっ、あっぶねーな、ていうかスカート履いてんだからそういうことするなよ」
    「あ〜、るっさいるっさい、それは女装経験者は語るってヤツ?」
    「持ち出すな人の黒歴史を!!」
     またいつもの調子で小突き会う。よくわからない変化なんていらない。お互い気楽に、適度にギスギス喧嘩してたまに助けてもらうくらいが丁度いい。
     なんだか嬉しい気持ちが心を満たして、口の緩んだあたしはつい、素直な言葉を出してしまった。
    「ありがとね、チトセ」
     そんなあたしの言葉に一瞬目を見開いたあと、チトセは柔く笑ってあたしの頭を撫でた。
    「ホンットにお前は………。まあ、怪我してなくて、良かったよ」
     階段脇に取り付けられた窓からキラキラとステンドグラスの明かりがあたし達に降り注ぐ。
     なんてことはない。なんてことはないはずなのに。
     あたしの心臓が馬鹿みたいに加速してドコドコ音を立てて、全身の毛穴という毛穴から汗が吹き出し、つま先からてっぺんまでカ〜っと血が上り詰めていく。ワケがわからなくて謎に涙腺まで緩み始めるからもうパニックだ。
     あたしは手伝いもそこそにその場から爆速で逃走。その日の夜はママと一緒のご飯も喉を通らず、どこか上の空で話を聞き流していた。そんなあたしを見ていたセシルが入浴のあとあたしの髪を梳かしながら
    「姫様、今日はどうしちゃったんです?あっ、もしかして姫様、恋でもしちゃったんですか!?キャ〜っ、セシルにもお話して下さいよぉ」
    なんて言うものだからあたしは座っていたドレッサーの椅子から転げ落ち、強かに頭を打ち付けた。
     倒れたあたしにセシルが慌てふためくのを横目にあたしはなんというか嫌に納得してしまった。
     恋。なるほど、あたしがチトセに稀に抱く感情に名前を書いたプレートをかけてやるならまさしくそれだろう、と。スコンと何かがハマる音がした。
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