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    yjumcxh

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    yjumcxh

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    去年の10月くらい…?結構前に書いてたメモです。クリ→リク またク視点。

    幻肢痛に呻く男がバーにいた。失くなったはずの足が痛いと、ひとりで酒を飲みながら喚いている。戦地でも、戦地から帰ってもよく見る光景だ。帰還した兵士はそのほとんどが体にも心にも痛みを抱えている。
    俺は呻く声を聞きながらブラッディメアリーを舐め、自分の傷まみれの体を思い浮かべた。俺の右脚にはでかい裂傷がある。戦場で、隣のやつが地雷を踏んで吹っ飛んだときに貰った傷だ。跡はあるが痛みも無ければ機能に問題もない。ただ、一歩間違えばこの脚は失くなっていたかもしれない。かなり酷い怪我だったから痛みもそれなりにあった筈だ。
    だが思い出せない。これはどのくらいで治ったんだか?はたして俺は、身体の一部が無くなったら痛みを感じるのだろうか?
    いつの間にかバーの男の呻き声には鼻を啜る音が混ざっていた。答えの無い事を考えるのは不毛だ。俺は思考を止め、酒を舐めた。

    イタリアから帰る飛行機でブラッディメアリーを飲み下すと同時に、そんなことも考えてたっけ、と思い出した。ブラッディメアリーの味が呼び水となり昔の記憶が思い出されたのだろう。気流の振動で揺れる赤い水面を見つめた。リックの隣で飲んだブラッディメアリーでこれを思い出した事は無かった。
    イタリアの地雷の威力は強烈だった。リックはフランチェスカとの未来を選び、俺はまだ失ってはいないがこれから半身を失う。俺の腕より脚よりずっと価値がある半身だ。既にこんなに痛むのに、来る幻肢痛はどれほどの苦痛なのだろうか?未知の痛みは想像もつかない。
    バーで聞いた憐憫を誘う啜り泣きが聞こえた気がした。リックの相棒だったが恋人でも婚約者でもない俺に痛みに喘ぐ以外に術は無い。惨めにひとり、眩しくも無い飛行機の中でサングラスを掛け、今まで貯め込んだ思い出が痛みを和らげてくれることを願うばかりだった。
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