最低な男ヒーローであっても、一応は学生の身分。
映画で見るような爽やかな青春とやらを囓ってみたいし、誰かに想われる甘い恋愛だって、してみたい。
時折浮かんでは消える、そんな欲。そんなものを強く意識していた、ほんの一瞬だったからだろうか。
「お前の心に別の人がいるのは分かってる。本懐を遂げるまでの繋ぎでも良い。些細なことにでも利用してくれて構わない。だから、俺と付き合ってみないか」
穏やかで、自分に向けられていなければ尊ばれるほどの年相応の、大人たちからすれば懐かしがられるような可愛らしい好意。それに甘えてしまえ、と彼は言った。
あまりにも彼が報われない惨たらしいその提案は、自分たちのためにも断るべきだ。せっかく息が揃い始めたというのに。要らない亀裂が走ってしまう。
普段は対立する天使と悪魔の意見が珍しく一致しておきながらも、その言葉は心の隙間を縫ってするりと入り込んできてしまって。
結果として、差し伸ばされた逞しい手を取ってしまった。
表の顔も裏の顔も知っていることも。
不満に思うか時期が来ればいつでも切れる手軽さも。
誰かに強く想われるという何とも言えない胸のむず痒さも。どんな関係性を持とうとも彼ならば何一つ口外しないと思えるくらいには高い信頼も。
全ての要素が不慣れな青年を、欲の元に後押ししてしまったのである。
何を被害者ぶってるんだろう。
一番被害者なのは、彼の、ダニーの方なのに。
彼の好意につけ込むだなんて、本当に、最低だ。我ながら、本当に。
※ダニ←ピタから始まるダニピタ。
一時の欲から付き合ったことに罪悪感を抱え続けるピーター×とりあえず事実を作って外堀から埋めていくダニー。本命がいようともアタックし続ければ何となる、意識させ続ける戦法で後に体も心も勝ち取ります。忍耐は美徳。