星に願うなら 今日は七月七日、いわゆる七夕の日だ。それにちなんだお祭りが行われるそうで、私は神楽さんから呼び出しを受けていた。
「神楽さん、ありがとうございます」
連れてきてくれた本人にお礼を告げる。浴衣も下駄もメイクも、すべて彼が用意してくれたものだ。
「別に。お礼なんていいから、歩き方に気をつけてよね」
ネイビーブラックの髪を揺らして、神楽さんはそっぽを向いてしまう。
やっぱり、とは思いながら。細やかな気遣いに嬉しくなってしまった。
(私が言ったこと、憶えててくれたんだ)
──忙しくて、お祭りに行く余裕がなさそうなんですよね。
本当に何気ないひと言だった。ともすれば、すぐにでも忘れてしまいそうな内容。でもそれを、彼は憶えていた。
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