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    chise

    R18指定、不完全な作品など…諸事情の作品収納。

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    chise

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    七虎オメガバース『始まり』
    まだカプ要素はカケラもありません。

    消毒液の匂い…

    整頓された医学書…

    フラスコやビーカー…

    椅子に腰掛ける虎杖を眺めながら、家入は首を傾げた。

    「んー、特に異常はないんだよね。喉も炎症がないし、鼻水もない。リンパ腺も問題なし…。」

    「だろ!?俺、風邪ひかねぇもん。」

    聴診器を首にかけながら、胸を張って自慢顔で語る虎杖にため息一つ。

    「…まぁ、微熱と倦怠感が続いてるのは気になるからね。念のため血液検査するよ。」

    手際良く注射器を用意しながら、家入は腕を出すように指示をした。



    事の発端は数時間前…





    「あー、身体怠い…。」

    背中を丸めて蹲る虎杖の姿に、伏黒と釘崎は驚きの表情を浮かべた。

    「お前…何か変なもの食べたか?」

    「夜通しゲームでもしてたんじゃないの?」

    訝しげに好き勝手なことを言う2人に、虎杖は不服そうに顔を顰めた。

    「ちげぇよ…。何日か前から熱があるみたいで、頭も重いんだよ。」

    そう語ると、虎杖は頭を抱えて俯いた。
    どうやら調子が悪いのは本当らしい。

    「…風邪か?」

    「バカは風邪ひかないって言うけど?」

    「まぁ、そうだよな。」

    顔を見合わせ口々に言いたい放題な2人。
    本当なら文句の一つくらい言ってやりたかった。
    …だが、今は反論する元気もない。
    虎杖はボヤける思考で2人の話を聞いていた。





    …その後、一応心配した伏黒と釘崎に受診を勧められて今ここに至るわけだが…

    「…で、心当たりは?」

    「ないっす!」

    自信満々に告げる虎杖に、家入が小さく溜息をついた。
    風邪以外にも、呪いなど原因をいくつか考えたものの当てはまらない。
    パソコンのカルテに症状と経過を入力していく音がテンポよく室内に響く。

    「まぁ…検査結果出たら連絡するよ。」

    「ウッス…」

    「念のために風邪薬を処方しとく。」

    パソコンから目を離さず、ひらひらと手を振りながら家入が告げた。
    虎杖も椅子から立ち上がり緩慢な動きでドアへと向かう。
    振り返り、一礼して部屋を後にした。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    それから数日が経過したが、身体の怠さも微熱も治らなかった。
    それどころか、日増しに身体に蓄積される熱。
    瞳は潤み、顔は紅潮し、そして…

    「虎杖…凄い甘い匂いしてるぞ。香水つけてるのか?」

    「え…いや、つけてねぇけど?」

    教室の机にに突っ伏していると、伏黒に怪訝そうな顔でたずねられた。
    気になって自分の匂いを嗅ぐが何の匂いもせず変わりもない。

    「あんま近づくなよ。…なんか、変な気分になる。」

    「変な気分って?」

    首を傾げて虎杖が聞けば、確かに伏黒の様子がおかしかった。
    伏黒も顔が紅潮して呼吸が荒い。
    少しだけ、目が興奮に輝いている気がする。
    それに…どことなく惹きつけられる匂い。

    「あの、伏黒…?」

    戸惑いながらも手を差し出したその時…

    『虎杖悠仁。至急、処置室まで来るように。』

    呼び出しのアナウンスが流れた。





    「失礼します。」

    ドアを開けて一声かければ、椅子に座って少し難しい顔をしている家入の姿があった。
    無言で向かいにある椅子を指し示し、座るように促されてそれに従う。

    「検査結果が出たよ。微熱と倦怠感の原因もわかった。」

    「えっ…何なんすか!?」

    カルテを確認しながら家入が口を開けば、虎杖は食いつくように身を乗り出した。

    「………」

    数秒の沈黙が空間を支配する。

    「…これだよ。」

    そう言って、家入は検査結果を差し出した。
    渡された用紙の記載された項目を確認していく。
    血液検査の値は正常値、特に疾患も見当たらない。

    「先生、特に異常ないんじゃ…」

    「よく見てみな。性別のところ。」

    怪訝そうにたずねる虎杖に、家入がため息混じりに答えた。
    再度、言われた通りに用紙に目を通していけば…

    『性別:男 バース判定:Ω』

    「……えっ?」

    あまりの動揺に…思考が停止した。



    この世には2つの性がある。
    一つは男女の性。
    そしてもう一つは…

    『第二の性・バース判定』

    α…政財界など、社会の重要ポジションに位置することが多い。身体機能や知識に優れた言わばエリート。人口の10%〜20%の割合。

    β…最も多くの人口を占めている中間層。もちろん中には、αに引けをとらないほど優秀な人材もいる。

    Ω…男女共に妊娠可能という、生殖機能に特化した性。定期的に起こるヒートにより日常生活に支障を与えることもあり、それ故に社会的地位が低くなる傾向がある。著しく個体数が少ない。


    今では誰もが小学校や中学校の学校教育で教えられる知識。
    昔は大きな差別があったが、今では法律の制定により階級での差別化が少なくなっている。
    …とはいえ、Ωの希少性が非常に高いのも事実。
    個体数の少なさはもちろんだが、未だに根深い偏見があるのも理由だった。


    「俺が…Ω?」

    虎杖が驚きながら自身を指差せば、真剣な面持ちで家入がゆっくり頷いた。

    「…え…俺は、ずっとβだって言われてて…」

    事実として受け止めるには処理が追いつかず、虎杖は戸惑い狼狽えた。
    今までβとして生きてきた自分が、Ωになるとは想像もしなかったのだから。

    「人によって稀に、16歳〜18歳くらいでバース判定が変わることもある。…でも、君の場合は宿儺の指を取り込んだ特異体質。詳しいことは解らないけど、それが引き金になったかもしれない。」

    淡々と語りながら家入が椅子から立ち上がった。
    戸棚に向かい引き出しを開け、中から取り出したのは錠剤のシート。

    「…これは?」

    手元に渡された錠剤を眺めながら虎杖がたずねた。

    「抑制剤だよ。君の症状の原因はヒート。…Ωが定期的にヒートを起こすのは知ってるよね?」

    「…はい」

    淡々と説明をする家入に、学校で習ったことを思い出しながら必死に考えを巡らせる。
    確かに聞いたことがあった。
    Ωは定期的に発情期というヒートを起こすということ…
    ヒートになると体調を崩すΩもいるということ…
    ヒート時はフェロモンを分泌してαを誘うこと…
    それを抑えるための抑制剤があるということ…

    「君は今、ヒートを起こしかけてるんだよ。体調不良もそれが原因。その薬はヒート抑制剤だから、飲めば落ち着くよ。」

    「…飲まなければ?」

    興味本位で聞けば、家入の乾いた笑い声が響いた。

    「フェロモン撒き散らしてαの餌食だね。」

    笑顔とは裏腹に冗談とは思えない重い声。
    …その瞬間、虎杖は手に持った錠剤を握りしめた。
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