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    youraku0510

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    youraku0510

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    半日だけ猫の姿になったクリ君がテメの本心を知る話。クリ→テメからのクリテメ。オル君が不憫。

    ※クリ君は大聖堂勤務という設定

    「あ」
    巡回中、たまたま通りがかった広場で野良猫と遊んでいるテメノスさんを見つけた。
    意外と動物好きなテメノスさんが近所の猫と戯れていたり餌をあげているのは僕も知っている。
    いつもだったら、まさに尻尾を振ってテメノスさんの元へ駆け寄るところだけど、猫と遊んでいるテメノスさんがあまりにも楽しそうで。
    なんだか邪魔するのも悪い気がして、僕は物影に隠れてソッとテメノスさんの笑顔を見ていた。
    ……それにしても。

    「僕も猫になりたい……」

    僕だってテメノスさんの心からの笑顔を向けられたい。……欲を言うならあの膝を独占したい。
    でも、そんなのはただの知り合い程度の僕には夢のまた夢で。
    一日でいいから、僕もあの猫になれたら……。
    そんな叶いもしないことを考えながら、トボトボとその場を離れた。
    ──その時、テメノスさんの膝の上の猫がジッと此方を見ていたことも知らずに。


    ***

    ──翌朝。
    朝日をモロに顔に浴び、急激に意識が浮上する。
    ゆっくりと目を開けると、そこは自分に宛てがわれた部屋ではなく、昨日の広場だった。

    …………………。

    ……え?は?えぇぇぇ!?

    な、なんで僕、外で寝てるんだ!?
    まさか酔っ払って!?いや、昨夜は酒なんて呑んでないし、ちゃんと自分の部屋に戻って寝たハズだ。じゃあまさか寝ぼけて……?
    (と、とにかく急いで戻らないと……!)
    混乱する頭を無理やり落ち着かせて立ち上がろうとした時、妙に地面が近いことに気がついた。
    (あれ?僕いま立ち上がったんだよ……な?)
    まるで子供、いや、それ以下の目線の低さに違和感を覚えた時、自分の右手の掌にピンク色の肉球が付いていることに気づいた。
    ま……、まさ、か。
    僕は恐る恐る広場の池を覗き込むと、そこには亜麻色の毛並みの猫が映っていた。

    「ニャアァァァァァーーーー!!??」

    辺り一帯に僕の叫び……いや、猫の咆哮が響いた。


    ***
    「にゃあ~……(はぁ……、これからどうしよう……)」
    現在、僕は広場のベンチに寝そべって途方に暮れていた。
    これはもしかして、何かの呪いの一種なのだろうか。でも人間が猫になる呪いなんて聞いた事ないし……。以前テメノスさんが狩人のジョブになった時、動物の耳と尻尾が生えたって言ってたけど、明らかにコレとは別物だよなぁ……。何せこっちは耳と尻尾どころか全身猫だし、などと考え込んでいたら、

    「おや、もう来ていたんですね」

    ……え?

    頭上から聞こえる声に顔を上げたら、そこには紙袋を抱えたテメノスさんが立っていた。

    「珍しいですね。いつもなら私が呼んで、ようやく姿を見せるのに」
    ……そうだ。この猫、なんか見覚えがあると思ったら、昨日テメノスさんと遊んでいた猫だ。
    ……って、今はそれどころじゃない!
    「ニャ、ニャア!ニャニャ!ニャーニャ!!(テ、テメノスさん!僕です!クリックです!!)」
    「待っててくださいね、いま食べる物あげますから」
    「ニャニャー!ニャン、ニャアー!(テメノスさん!今それどころじゃ……!)」
    「今日は煮干しですよ。ほら、あーん」
    ……………………。
    まぁ、今は焦っても仕方ないか。


    ***

    煮干しをたらふく食べさせてもらった後、僕は今、夢にまで見たテメノスさんの膝の上を堪能している。
    はぁ~~……、この猫、いつもこうやってテメノスさんに膝枕してもらってるのか……。
    こんな風にテメノスさんに可愛がって貰えるなら、もうずっとこのままでも……。
    陽の光とテメノスさんの膝の上の心地良さにウトウトしながら、そんなことを考えていると。
    「……はぁ」
    ふいに頭上からテメノスさんのため息が聞こえた。
    「ニャ?」
    「あぁ、すみません。……少し考え事をしていたので」
    「ニャ……」
    「クリック君、という人のことなんですけど」
    「ニャ!?(僕!?)」
    「その人は誠実で優しくて、何事にも一生懸命で……。私なんかのどこがいいのか、いつもテメノスさんテメノスさんって慕ってくれて……」
    「…………」
    「私も素直じゃないし、あんな風に純粋に好意を向けられることに慣れていないので、どうしていいかわからなくて……。つい、からかったり天邪鬼な態度をとってしまうんです」
    「ニャア~……」
    「そんな彼を、昨日から一度も姿を見ていなくて……、馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、もしかしたら、こんな私に愛想を尽かしたのかな、とか嫌われてしまったのかな、とか嫌なことばかり思い浮かぶんです」
    「!!?」
    僕が!?
    テメノスさんを嫌いに!?
    そんなわけ無いでしょう!!
    だいたいテメノスさんが素直じゃないのは、とっくにわかってますよ!でも僕はそれも全部ひっくるめて貴方のことが……!
    「あれ?」
    好き、と続けようとした時、突然テメノスさんの声に遮られた。
    「ニャ?」
    なんだ?と、僕もテメノスさんの目線の方に顔を向けて……凍りついた。

    そこに立っていたのは、誰あろう僕自身で。
    「クリック君?どうしたんですか?」
    だが、僕の姿をした『ソイツ』はテメノスさんの声に応えることはなく、ただ「ニャア」と呟いた。

    次の瞬間、急激に身体中が伸びるような感覚に陥る。

    気がつけば、テメノスさんの膝の上で寝そべっていたハズの僕は、今テメノスさんの膝を跨いでいる。
    ……えーと、この体勢は確か……、あ、『対面座位』とかいうヤツだ。
    「─────!!!?」
    全身の血液が沸騰しそうになりながら、慌ててテメノスさんの上から飛び退けた。
    ドタッという音と共に思いきり背中を打った。痛い。

    「……え?クリック君?あれ?」
    さすがのテメノスさんも混乱しているようだ。
    いや、そりゃそうだろう。今まで自分の膝の上で食っちゃ寝していた猫が、いきなり知り合いの人間になったんだから。
    普通なら、そんなテメノスさんをまず落ち着かせるところだけど、今は。

    「……テメノスさん。僕が貴方を嫌いになるわけありませんよ」
    「え……?」
    「だって僕は……、貴方のことを……」


    「クリックゥゥゥーーー!!!」


    「ひっ!?」
    突然響き渡った怒声に思わず後ろを振り返ると、そこには縦・横・ナナメと顔中ひっ掻き傷だらけで悪鬼の形相を浮かべたオルトが立っていた。

    「お、オルト?どうしたんだその顔!?」
    「お前がやったんだろうがぁぁぁ!!」
    「え?……えぇぇ!?」

    その時、「ニャア」と猫の鳴き声が聞こえ、声の方向に目を向けると、そこにはつい先ほどまで『僕』だった亜麻色の毛並みの猫が呑気に毛繕いをしていた。

    まさか……、今日僕が猫の姿だったのは、僕とこの子の中身が入れ替わっていたから……だったのか?
    だとしたらこの猫、今まで僕の姿で何をしていたんだ!?まぁオルトの顔を見たらだいたい想像つくけども!!
    とりあえず今は……。
    「テメノスさん」
    「な、なんですか?」

    「さっきの話の続き……、また後で話します」
    「……はい。わかりました」

    テメノスさんの返事を聞くやいなや、猛ダッシュで広場を後にする。
    「待たんかゴラァァァァ!!」
    後ろから覇王の闘気を纏って追いかけてくるオルトの気配を感じつつ、件の猫を横目でチラリと見る。

    (全部お前のせいだからな……!)

    そんな僕の視線を受けながら、その猫はどこか愉快そうに笑った気がした。

    END



    おまけ~オルト君の災難~

    「ここに来るのも久しぶりだな……」
    カルディナ前機関長が起こした一連の事件もようやく落ち着きを見せたものの、まだまだ聖堂機関が抱える問題は山積みである。
    現在、副機関長となった俺は文字通り寝る暇も無いほど多忙を極めている。
    そんな中、今日は聖堂機関と聖火教の方針、そして今後の活動について現教皇と話し合うために、ここクレストランド地方の大聖堂へと訪れた。
    クリックがここの配属になって久しいが、アイツは元気にしてるだろうか。
    「せっかくだし顔でも見ていくか」

    案内されたクリックの部屋に入ると、やはりというか何というか、この寝汚い友人はこんな時間になってもまだ寝こけていた。
    「おいクリック、いつまで寝てる気だ。いい加減起きろ」
    二、三発顔を引っ叩くと、今まで呑気な寝顔からカッ!と目をかっ開き、

    「フギャアァァァァァァ!!!!」

    獣のような雄叫びをあげ、バリバリッ!と俺の顔を縦・横・ナナメに引っ掻いた。
    「ギャアァァァァ!!?」

    かくして俺は当面の間、顔だけ包帯グルグル巻きの状態で執務にあたることになるのだった。




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