Bail out to somewhere else 操縦桿を握る指先がなんとなく冷たいと感じた頃には、それまで遥か足元にあった筈の雲は随分と近くに来ていた。
朦朧とする意識の底で頭に響くのは、切り裂くようなアラーム音。金切り声に近い呼びかけ。骨と内臓の奥底にまで響く振動。そして、慣れ親しんだ轟音。いまや雲は眼前に迫り、そして息つく間もなく頭上へと上がっていく。正確には、雲が上がっていったのではなく、自分が堕ちて行っている。そう気が付いた頃には、今度は味気のない土色の地面が視界に入り始めた。
冷たい手をよろよろと這わせ、座席のレバーを引いてもびくともしない。あたりを包み込む分厚い金属は、どうやら自分を道連れにする気らしい。ますます大きくなるアラーム音。今度は視界の端に炎が見え始めた。
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