彼らの夏と飛行機雲残暑厳しい夏のグラウンドは、さんさんと降り注ぐ日差しから受けた熱をそのまま跳ね返してじりじりと体力を奪う。
風も強くなく野球をするには絶好の天候なのだが、どうもそのおかげで当の選手たちは余計に消耗してしまったようだ。
中には熱中症で倒れてしまうものまで現れ、「これじゃ練習にならねぇわ」という監督の一言と共に本日の活動はお開きとなった。
それを受けまだ元気の有り余っていた兎丸がせっかくだし遊びに行こうと騒ぎ出し、それに便乗して猿野が、勢いに引きずられる形で司馬や犬飼らといったいつもの面々が揃った。
「みんなで出かけるなんて久しぶりだね」と言われ、子津は改めてつい先日まで行っていた練習風景を思い出す。
そうだった、朝から夜までグラウンドに缶詰になって練習をするのが普通であった以前では、部活の後に街に繰り出すなど考えられず、それぞれがまっすぐ家路に着くので精一杯だった。
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