AndL.(序) 一
───夢とは何と不思議なものだろう。肉体の五感なんてそっちのけで、温もりや暗さを信じ込ませるのだから。
意識を浮上させ、目を開けるより先にふとそんなことを思った。夢の中では感じなかった冷たさを、自分の背中から感じたからだ。
目覚めのとき、普段わざわざ意識しない哲学的・倫理的な論点が突然思考の中央に躍り出てきて僕の思考を鋭くさせることがある。夢の中で何かの学問のエキスパートになって呪文のように学術を諳んじる夢を時折見るが、その延長のようなものだろうか。聡明な気分を半ば引きずりながら現実へのトンネルを潜り抜けているなら、かえってぼんやりと鈍った思考の寝起きよりも寝惚けていると言えるかもしれない。
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