「俺、今日誕生日なんだけど」
背もたれを抱くようにして椅子に座ったアンドラスがつぶやいた言葉。ちらと暦に視線を向ける、昨日は22だったから今日は7月23日だ。よく知っている、何日も前から指折り数えていたのだから。
「で?」
「何かないかなって」
なにか、とは。付き合って長いがものを強請ることは少なかった筈だが。なにか、手に入りにくいものが欲しいのだろう。
ねだり方が下手くそで愛しい男だ。
「なんかってなんだよ」
「プレゼント、とか?」
伺うような上目遣いは、男がやっているのに可愛らしく見える。
「何が欲しいんだよ」
「あの…えーっと…」
言いづらそうに口籠る。
「とりあえず言え、用意できるかはそれから判断する」
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