無題ベンティスカの狛犬を知ってるか?
まあ、よくある昔話さ。昔、ベンティスカには一対の懐刀がいた。…あ?双子じゃねえよ。血の繋がりはなかったが、そいつらは誰より相性が良かった。話さなくても通じたし、凹凸の加減が誂えたみたいにぴったりで…だが一人は離反し、一人は残って、“ベンティスカの狛犬”は死んだ。
言ったろ?よくある昔話だって。どんなに相性がよくたって、一生を添い遂げるのは希なもんさ。
…俺だって別に、別れようと思って別れたわけじゃねえよ。この街を出て随分いろんなところへ行ったが、あいつみたいな奴はどこにもいなかった。
当時は俺だって覚悟決めてよ。だが今思えばまだ青かったな。覚悟はあったが計画なんてもんはビタイチないときた。とりあえず賭場で資金稼ぎしながら潜んでたら、あいつ、あっさり見つけやがって。おまけに差し入れまで寄越すから、バレたらてめえも道連れだぞっつったんだよ。そしたら「まあ、そのつもりだけど」なんてボヤけた返事しやがって。
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