白いレースの布と 休日の昼下がり、家にいると同じく一緒に暮らしている慈々がみとらの名前を呼ぶ。なんだろうか、とみとらは慈々の所へとやってきた。そこにいくと、慈々がなにやら布のようなものを手にして、こちらを手招きする。みとらは近寄り、しゃがむ。しゃがまないと、身長差のせいで慈々の声が聞こえないのだ。
「慈々?」
「掃除してたら出てきた、どうする?」
それは白いレースの布だった。いつ買ったか覚えてなかったが、確か目隠しで買ってみようか、と買って結局使わなかったものだったはず、とみとらは思い出す。
じっと布を見ていたみとらは、おもむろに慈々の頭に被せた。丁度部屋から入る太陽の光で、まるで綺麗な花嫁みたいに見え、みとらは笑う。
「慈々、綺麗だ」
みとらがそう言うと、慈々はなにやら考え事をしたあとに、余った布をみとらに被せた後、鼻にキスをする。
「みとらも似合うよ」
そう笑う慈々。それに対しては本当に似合ってるかは分からなかったが、それよりも、とみとらは自身の口に、正確に言うと唇を指さす。
「ここじゃなくて良かったのか?」
ここだけの話だが、みとらは慈々とのキスが好きだ。自分より小さい口なのに、まるで逃がさない、と言わんばかりに情熱的なキスをするのだ。見た目とのギャップからか、みとらにしか知らない一面だからか、簡単に言うと、鼻だけでは物足りなかった。
一方、そんなことを言うみとらに少し固まる慈々。そしてなにやら葛藤してるのか、顔に手をやり考えている。そんなに嫌だっただろうか、とみとらは不安になった。
「だめだったか……?」
恐る恐る聞くと、すぐに唇にキスをされた。触れるだけ、とはいかず、ぬるり、と慈々の小さな舌がみとらの舌と絡む。やはり慈々とのキスはすきだ。
慈々の目を見る、これは我慢しているなとすぐに分かった。我慢しなくても、自分はいつでも慈々に触れて欲しいのに。なんて思う自分ははしたないだろうか。
「慈々、我慢しなくていいから」
みとらはそっと、慈々の手を握り笑う。もっと触れて欲しい、愛して欲しい。そう呟いて。