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    ちょこ

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    エガキナ
    よその子さんお借りしてます!

    ##エガキナ

    星、聞いてくれるか「……星にだけなら話せれる、聞いてくれるか?」
     とある一室、ジュードと呼ばれるニジゲンは椅子に座り、写真に写っている人物に向けて話しかけていた。星、と呼ばれた写真の人物は、ジュードを創った創作者───ツクリテだった。もう亡くなってしまい、ジュードは今、その星の知り合い───エリーの所に居候していた。
     ジュードは薄暗い部屋の中、星など見えない空が映る窓から、ほんの少しだけ入る月の光に照らされつつ、静かに語るかのように口を開く。
    「……ここの暮らしにもだいぶ慣れた、エリーや、ここに住んでいるニジゲン達からも、良くしてもらっている。星の埋葬を手伝ってくれたニジゲンも、ここにいるんだ」
     星との長いようで短かった暮らしも良かったか、と言われるとそうはいかなかった。星と出会った時には既に、星の体は病魔で侵されており、長年の無理が祟ったのか、あっという間に衰弱してそのまま空へと消えてしまった。
     その後に、エリーに引き取られ、ジュードにとっては気の進まなかった居候生活が始まった。そのまま、消えてしまおうと思っていたジュードからしたら、この不平等な世界で生きていく事も、星のいない現実から目を逸らしたかったからだ。
     そしたらどうだ、今こうして今でも自分は無事に暮らせている。人は変わる、と聞いたことはあるのだが、それはニジゲンにも言えるのだな、とぼんやり思う。星が死んでもなお、手紙に残すほどに自分の事を気にかけ、エリーのことを気にかけたのを知ってしまうと、簡単に消えてしまうのは、星が悲しむと思ったからだ。
    「星、お前、俺に呪いでもかけたか? ……冗談だ。……星、あの、な」
     ジュードは目をふせつつ、口を軽く閉ざす。少しばかりの沈黙の後、ジュードは話し出す。自分の中に新たに生まれた気持ちに。
    「……あの、な。……俺、愛おしい、って人がいるんだ。その人は真っ直ぐで……綺麗な……そうだな、真っ直ぐ照らす太陽みたいに俺には見える。いつも青いマフラーをしてるのが印象的なツクリテだ」
     ジュードは目を閉じる。ジュードの言っているツクリテは、連理の事だった。連理、居候してすぐに知り合ったツクリテで、強く、戦い方が綺麗で、そしてエリーのことが好きで、エリーを見つめる目が違う事に前々から知っていた。気持ちを伝えて実らなかったにも関わらず、それでもエリーの隣にいることを選んだ連理をずっと見ていた。
     それが決定打だったかもしれない、もしかしたらもっと前からだったかもしれない。けれど、はっきりと分かるのは、その時から連理を愛おしいと思えたのだ。ずっと、好きだとか、恋だとか、愛だの分からなかったのだが、その時、わかったような気が来たのだ。
    「……星の事だ、どうせ笑ってるんだろう。……作り物でしかない存在のニジゲンが、こんな感情を持つなんてな」
     自覚した時、連理に言うか迷った。言いかけた時もあった。けれど、ジュードは伝えるのを辞めた。連理は、自分の事をそういった目で見られている事に気づいていない。そもそも、自分がそういう気持ちなのも知らないだろう。ツクリテとニジゲン、連理はあくまでも、自分の事はニジゲンと見ている。伝えても、連理を困らせてしまう。困らせてしまうのなら、伝えない方がいい。
    「俺はエリーのことをまっすぐ見てる連理が好きだから、伝える気もさらさらない。俺だけが知ってればいいし、いつか消える時に、一緒にこの気持ちも消えたら……なんだ、星、不服そうだな」
     写真の表情は変わらないというのに、どこか悲しそうな顔をしたように見えた。それに少し微笑むジュード。
    「こんな気持ちなんて、ニジゲンが持ってはいけないんだ。作り物の存在、ツクリテがいないと生まれてこない、作り物は、作り物として終わらせた方がいいだろう?」
     あくまでも、ジュードは人間ではない。あくまで創作物の登場人物、ニジゲンとして生まれなかったら、作品内として、書いた通りのままの物語が終わるはずだった。けれど、裏を返せば、ツクリテがいて、顕現出来たからこそ、今まで知らなかった気持ちを知れた。それだけは、良かったと思えるのだ。
    「……エリーと連理の傍に出来るだけ居たいんだ。どうあがいても、俺は消えても星のいる……天国とやらにはいけれないからな。……星、もし二人がそっちに来ても、今の話、内緒だからな。絶対言うなよ」
     そう念を押すように言うジュード。ジュードはそっと、星の写真を手に取り、手でなぞる。
    「……ありがとう、俺はあの時、消えなくてよかったかもしれない。これからも、空で見守って欲しい。言っただろ、人は死んだら空で見守ってるって。その言葉、俺は信じてずっと空を眺めてるから」
     そう言って窓を眺める。先程まで見えなかった星空が、綺麗に見えていた。
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