夜の隙間にて(沼男HO4×HO1) 選んだカラーコンタクトの色は濃赤。
無人の化粧室で、曳田小唄はぱちぱちとまばたきをした。今日の相手は派手好きだとリサーチ済みだ。リップの色もいやらしくならない程度に濃く塗り重ねて、唇を合わせて馴染ませる。ブラウスのボタンはもうひとつ開けておくことにした。肌寒さにはまだ遠い季節だし、持ち前の華奢な肩口をアピールするのにはちょうどいいだろう。
最後に手ぐしで髪をひと梳きして、小唄は職場を出た。オフィス街の日は既に落ちきって、街灯がきらめいている。よそゆきの装いを職場の知人に見られる前にと早足で歩き出した小唄は、数ブロックも進まないうちに──上品な街並みにはそぐわない、鮮やかな赤い髪を目にする。小唄は反射的に目を逸らし、それからもう一度、その人物に目を向けた。
金曜の夜7時。疲れと浮わついた雰囲気が同居する定時後の都心の街においては、街灯に照らされた派手な赤髪が目を引くことはあれ、興味を持たれるほどでないようだ。ビル街を通りすがる人々は歩道の一角に佇む彼を一瞥するものの、すぐに目を逸らして足早に各々の目的地へ向かっていく。……その赤を見知った自分を除いては。
男は小唄に気づくと、にんまりと笑みを浮かべて歩み寄った。
「よーっす、曳田さん」
「……こんばんは?」
声をかけられ、小唄は上品な微笑を崩さないまま他人行儀に返答した。こんな怪しい風体の男と間違っても親しいだなどと思われたくはない。言外に警戒を深めたのを察してか、赤髪の青年は殊更ににやにやとからかうように口元を歪ませる。
「あーそっか。えっとねェ……そう、今さあ、道に迷っちゃってて。地下鉄の入口ってこっちで合ってる? ちょっと教えてくんない?」
「……いいですよ。近くまで案内しましょうか」
「助かる~。地下通路がマジ迷路で全然わかんねえんスわ。とりあえず地上に出てみたんだけどさあ」
並んで立ち話をするのも苦々しい気持ちで、小唄は相手の返事を待たずに早足で歩き出した。もっとも、彼女の早足は男からすれば簡単に追いつける速さかもしれなかったが。
知人に見咎められることもないだろう街並みに至ってやっと、小唄は目を合わせないまま口を開く。
「何であんたがこんなとこにいんのよ」
派手な柄シャツに赤髪にサングラスのあからさまにうさんくさい男──柳二束は変わらずの笑みで、歩きながらポケットに手を突っ込んだ。
認めたくはないが、小唄はこの男と顔見知りだ。小唄はいっときの交際相手となった不特定多数の男性から(本人の意志として、あくまで詐欺行為ではないと認識しつつ)金銭を得ては身をくらます道徳的とは言いがたい行為にたびたび手を染めており、そんな「副業」に際してこの男と関わることになった。金さえ払えば法に触れようが何だろうがこなす「なんでも屋」。それが彼の名乗るところであり、小唄も必要に駆られて時たま連絡を取ることがあった。
だが今日のように、彼が何の前触れもなく突然コンタクトを取ってくることは稀だ。それも、本業の職場近くの瀟洒なオフィス街で。
「いやー、この近くでお仕事頼まれちゃってさあ。これがいい稼ぎになんのよ」
「だからって私に声かけてくることないでしょ」
「まあまあ、そこは知り合いのよしみ? 的な? いつも会ってるのと違う場所でいつもと違うカッコした小唄さんに会えて、なんか運命感じちゃってェ」
「まず『いつも会ってる』に大いに反論したいんだけど」
大げさにため息をつきながら、二束がわざわざ自分に接触してきたという事実に対して小唄はもやもやとした暗雲を胸の内に感じた。それを振り払うように、小唄の歩みはおのずと速まる。
「これからカレとデートなんだけど? もうすぐ待ち合わせなの、用がないなら行っていい?」
「そう、それそれ。そのデートなんだけどさ……小唄さん、もしかしたら行かないほうがいいかもよ?」
「は?」
二束にしては珍しく忠告を思わせる発言に小唄は違和感を覚え、足を止めて斜め後ろの彼に顔を向けた。視線の先は変わらずの微笑、あるいはにやつきだ。その表情はまるで「笑っている」と書かれた仮面がはりついているだけのようにも思われた。本来は親しみを表明することが目的のはずの笑顔はどう見ても下世話な好奇心を内包していて、小唄は隠すことなく二束に疑いの目を向けた。
「どういうことよ」
「いや~、そこまでは……。自分ってそんな、曳田さんのプライベートに立ち入るほどの関係じゃないしねえ?」
「……うっざ」
露骨にふざけてわざとらしく指を組みもじもじとした態度を取る二束の姿に、この男は人を苛立たせることに関しては抜きん出ているなと小唄は思う。数回の仕事上のやり取りを経て徐々に慣れてはきたものの、知り合った当初は「なんでも屋」を名乗るこの軽薄な男をどれほど信用していいものか測りかねたものだった。
怪しげな忠告の言いなりになるのも不愉快だと言わんばかりに、小唄は改めて「定時後にデートを控えた都心のOL」の面構えを取り戻し、きらきらとしたか弱い女性を装う態度で──かつ、敵意をもって──彼を見返した。
「やだあ、二束くんたら……もしかして私がデートに行くなんて言ったから嫉妬してる?」
「っはは、そうかもね! そんなキレーなカッコしてたら誰でも見とれちゃうし? 今日いつもよりあざといもんね」
あからさまな演技に演技で返された二束は心底楽しそうに笑う。小唄の今日のメイクアップがターゲットに合わせたテイストであることも筒抜けのようだ。二束は小唄の頭ひとつ上で、ひとしきり肩を揺らした。
ま、言うだけ言っとくかと思ってさ。二束はそう言うと、小唄の返事を聞くまでもなく踵を返した。案内させた地下鉄の方向へ向かうわけでもなく、別れの挨拶ひとつもないあたりがいかにも嘘つきで薄情だ。小唄は呆れてそれを見送った。
嫌な予感がする。
派手な長身の姿が遠ざかっていくのを見ながら、小唄は足を止めたままでひとり思案した。「金の亡者」という単語をそのまま人間の形にしたかのような彼が自分に声をかけてくるということは、それだけ彼に金銭的なメリットがあるということであり──すなわち面倒ごとが絡んでいるということだ。
先ほど胸の内に湧いて出た暗雲が再び色を濃くする。もしかすると彼の言う通り、予定をすっぽかしてでも帰路についたほうが身のためなのかもしれない。
だがそう感じると同時に、小唄は自分の詐取の腕前を自負してもいた。
今日の相手と会うのは小唄にとって2回目だ。某大企業の営業企画部でチームリーダーを務めるというその男性を人づてに紹介され、初回の食事で得た感触はまずまずだった。光沢のあるスーツには上質なシルクが織り込まれていそうだったし、腕時計はイタリアの有名ブランドのフラッグシップモデルだ。かといって、知り合った女性に対して性急に距離を詰めてくるような乱暴さを持ち合わせているようでもなかった。乱暴者に対してはそれ相応の金の巻き上げ方を知っている小唄だが、今回は短期決戦の必要はなさそうだと計算していたところだった。
うまくいけば継続的な資金源になってくれそうだし、いざとなったら安全策を講じればいい。己のこれまでの計画の数々を思い返し、小唄は事務的に計算する。生かさず殺さず、相手に機嫌良く財布を開かせるのが彼女の常套手段だ。リスクを取らないように気を引き締めて立ち回れば、身に危険が及ぶほどの問題は起こらないはずだ。
それに何より、自分が二束の助言に従うことで彼への利益を生むかもしれないという可能性が、小唄にとっては途方もなく癪だった。
小唄は手早くスマートフォンを取り出し、今晩のターゲットに向けてメッセージを飛ばした。『こんばんは! ごめんなさい、職場近くで道案内をしてたら少し遅れちゃいそうです。すぐ行くので待っててくださいね。』親しげなハートマークも抜かりなく添えて。
赤髪の男が立ち去ったのとは逆の方向へ、小唄は歩き出した。
■
結論から言えば、2度目のデートは失敗に終わった。
先方が予約していたであろう2軒目のバーへの誘いを微笑を絶やさないままで丁重にはっきりと断り(もちろん先方の顔は立てた上でだ)、足早にその場を立ち去りながら小唄はスマートフォンを取り出す。二束は飛ばしの携帯をいくつか持っており、小唄はそのうち数件の番号を知らされていた。金の話になれば飛びついてくる彼のことだ、どれかは通じるだろう。
大抵は何回かかけ直す羽目になるが、今回に限ってはワンコールで通話が繋がった。そんなところにも思い通りにならなかったデートの顛末を嘲笑われているような気がして、小唄は応答があるやいなや小さく舌打ちした。
「はいは~い毎度どうも、なんでも屋の柳でーす。大事なお荷物運びから愛犬のお世話まで、ご用命があればなんなりと」
「二束くん? あんたどうせ暇でしょ、今すぐ来てくれる?」
「あらら、小唄さん? そんなに求められると嬉しいねェ。どしたの、カレには振られちゃった?」
「うるっさいわね」
待ち合わせ場所を指定して、せいぜい苛立ちが伝わるよう小唄はブツリと通話を切り上げた。固定電話だったら受話器を叩きつけていたところだ。
目的地──二束との「ビジネス」でよく利用する繁華街の入口──へ向かいながら、一体いつ歯車が狂ったのかと小唄は思いを巡らせる。
前回は着こなしに高級感があり羽振りが良さそうだったはずのデート相手は、今日に限ってどこか余裕がないのを隠そうとする様子だった。身に着ける物品には変化がないものの手入れをするゆとりがないように見受けられ、本人も気づいていないようだったが心なしか会話のテンポが速く、自分のペースで話を進めようとしてくる。まるで小唄をダシに利用しようとしてくるような……自分と似た、それでいて自分よりもレベルの低い小狡さを感じた。そういった思惑に敏感な小唄は本能的に不穏さを感じて、いつも以上に気をつけてディナーに口をつけることにした。万が一ドリンクに何か盛られていようものなら笑い話にもならない。
──それに。
なにか、嫌な目線を感じた。誰かに監視されているような。首のうしろに敵意だか好奇心だかを感じて、小唄は密かに警戒を強めた。
こういう時は無理に欲張って利を得ようとはしないほうがいい。小唄は目の前の男をさっさと切り捨てることにして、自動化された相手の機嫌を取る定型文をお決まりの声色で発しながら、自分に向けられた何者かの気配に意識をそばだてていた。
──二束くんが絡むと大体こういう嫌な目に遭うのよね。
──だからアイツ、鬱陶しいんだわ。
彼がその「嫌な目」を予見して警告してくれているという事実を棚に上げ、小唄は眉間に皺を寄せる。
通話で指定した二束との待ち合わせの目的地までは地下鉄で15分ほどだ。小唄は緩めていたブラウスのボタンを閉じ、髪を軽く梳いて肩に流した。
■
つい先刻まで一緒に過ごしていた男よりも、二束は背が高い。髪や服装も手伝って、人の波の向こうのひょろりとしたシルエットを見つけるのは容易だった。繁華街の入口で柱にもたれる彼を見つけ、小唄は念のため周囲に知り合いがいないか一通り見渡したうえでずかずかと歩み寄った。
「よっす小唄さん。デートどうだった? やっぱあんな男より自分のがよかったっしょ?」
「……あのねえ」
気さくを装った軽薄な態度で話しかけられた小唄は、確信とともに二束をじろりと睨みつける。間違いない。先刻感じていた視線の正体は、目の前の男だ。
「あのクソ野郎、なんなのよ。アンタ知り合いかなんか?」
「さあ~? 自分には何のことだか?」
「ん」
「あー思い出した思い出した。自分、ちょっとあのオニーサンのお守りを頼まれてたんスわ」
二束のあしらいをすっかり心得ている小唄は財布から紙幣を数枚抜き出して渡し、それと同時に二束は立て板に水といった様子ですらすらと話しはじめた。もちろん、紙幣は流れるようにポケットに滑り込ませて。
渡した額だけ適切なサービスを提供してくれるなんでも屋は、小唄がつい先ほどまで会っていた小金持ちの男についての情報を吐き出した。聞けば、相手の男は事業に失敗して借金を抱え、あろうことかそれを踏み倒そうとしていたとか。初めて小唄と会った時期にはまだビジネスで挽回する余地を見いだしていたそうだが、その計画はつい数日前にご破算になったとか。いよいよ首も回らなくなって、二束の知る「本職のお兄さん」とやらの出番がもうすぐだとか。夜逃げしないよう監視を頼まれていたなんでも屋の視界のなかで、男は適当な交際相手を見繕ってうまく金を巻き上げようとしはじめたとか。
小唄はうんざりした顔で、やっぱりね、と今日何度目かのため息をついた。そのままスマートフォンを取り出し、つい先ほどまで愛想の良いメッセージを送っていた相手を選択したのち──躊躇いなく着信拒否のボタンを押す。一部始終を見届けた二束は一切の遠慮なくげらげらと笑い出した。
「お互い金ぶんどろうとしてんの面白すぎでしょウケる。てか小唄さん、それだいじょぶなの? そんなにすぐブロックしたら逆上されねえ?」
「そんな大した奴でもなかったもの。あの様子なら絡んでくるほどの甲斐性もないでしょ、どうせ。他にも女はいるしとか言ってさっさと次に行ってくれるんじゃない?」
「確かに? まあ、次に行くか小唄さんに執着するかは賭けだけどね」
「あんな奴の本性を見抜けなかったのは私の落ち度だし。万が一そんなことになっても自力でなんとかするわ」
「……へえ。強気だね」
トラブルが生じた際に誰に頼るか、自分が連行されないためにどう取り繕うか、どんなふうに他人に取り入るか。対処法は思いつく限りの状況に対してシミュレート済みだ。小唄がそう言うと、不意に二束の顔にはりついていた笑顔が消えた。
柳二束の「無表情」は彼にとって感情を持たないことではないのだと、そのとき小唄は思った。お世辞にも上品とは言えない微笑が彼にとっての素の表情で、それが消える時はなにか特異な感情を抱いた瞬間だ。それは、二束から笑みという仮面を剥がしたことで垣間見えた別の一面のようでもあった。そんな真顔で、二束は小唄の顔をじっとりと見つめた。
自身も「清楚な受付嬢」の仮面を使いこなす小唄は、目の前にいる男のそんな表情の変化を敏感に感じ取った。
「……なによ」
金銭のやりとりのおかげで、二人は手を伸ばせば触れられるほどの近さにいた。距離が詰まったぶん、小唄からすれば見上げなくてはいけないほどの身長差が明らかだ。そんな高さからまっすぐ目を覗き込まれて、小唄は内心たじろぎながらもその目を見上げるようにして睨み返す。
至近距離でよく見れば、サングラス越しの彼の瞳は闇に溶け出しそうな濃赤をしていた。小唄のカラーコンタクトとは違って、その虹彩は生来の色かと思われた。
「目ェ赤いんだね。カラコン?」
彼女が感じたのと同じことを二束も言う。いつものへらへらした笑みは浮かべず、彼女の容貌に言及しながらも、欠片も興味がないことを隠さない。小唄は返事をしなかった。
「その目うるうるさせて見つめられたら、みーんなアンタのこと好きになっちゃうんだろうね」
さっきまでじろじろ見てきた視線はあんたのほうじゃない。そんな返答も声に出せずに、小唄は呼吸をひそめて彼の目を見つめ返すしかなかった。
──二束のその態度は、小唄にとっても新鮮なものだった。普段なら彼女の目に見つめられた男は見惚れるか、たじろぐか、意味もなく自信を抱くかのいずれかの反応を返す。異性を翻弄し何らかのリアクションを期待して振る舞う彼女にとって、二束が今見せている無表情はある意味で興味深いものだった。
二人が持つ妖しげな赤。それは根本的に違う色ではあれど、暗闇に並び立てば溶け合いそうなほど似た色をしていた。
夜の街の片隅で、街灯とネオンの光に照らされる。通り過ぎる車のヘッドライトも、街をよぎる人々が持つ端末のディスプレイも、暗闇に慣れた目を刺すかのようにまばゆい。そんな光の明滅のなかで、二人は闇に溶け出しそうな赤をその身に携えていた。
ひとつ息を吐いた二束は、改めて小唄に向き直る。その顔には既に、いつもの軽薄な笑みが戻っていた。
「まー、今日のところは予定も早めに済んじゃったってことで? 飲みにでも行きます?」
今しがたの視線の交錯が非現実だったかのように感じられ、小唄は軽く首を振ってハンドバッグを持ち直す。
「なんでそうなるのよ」
「ほら、自分、見守り係で忙しかったからまだ飯食ってなくてさあ。それに、姐さんとも良きビジネスパートナーとして? 親睦とか深めちゃおっかなって」
「何がパートナーよふざけんじゃないわよ」
小唄は憤慨して顔を背けた。こんな奇妙な男と同類だと思われるのは心外だ。自分は自分のやり方でうまくやっているし、親近感を覚えられでもしたらたまらない。
とはいえ、彼の忠告である程度警戒心を呼び起こされたのも事実だ。礼を言うのも癪で、小唄はふてくされた顔になる。
「……まあ、一杯くらいならいいけど」
返答に困った小唄はせいぜい謝意を悟られないよう、肩をすくめて歩き出す。先ほどとは違って今度は急ぐ用事もない。振り返らず歩みを進める小唄に、二束は同じ速度で隣に並んだ。
「行こ行こ。安くて美味い店知ってんスよ」
「ああそう……。ったく。ま、さっき渡した情報料が飲み代だと思えばいいか……」
「あれっ? 姐さんが奢ってくれるって話じゃなかったっけ?」
「ひとっことも言ってないわよそんなこと。つーか今回は何の利益にもなんなかったのよ。あんたのほうこそ私の苦労をねぎらってくれる? さっきので手持ちはあるんだから出しなさいよ」
「人を騙くらかして良い思いしようとした詐欺師の台詞か? それ」
どこまでも軽薄な軽口を飛ばしながら、賑やかな夜の街を並んで歩く。
きっといつまでも、こんな夜から逃れられない。小唄にはそんな予感がした。
偽りの赤はくろぐろとした夜に溶けてゆく。
小唄はそんな夜闇の色のことが嫌いではなかった。
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あとがき
おつかれさまでした! 夜の街で生きてる二束くんと小唄さんの話でした。
ふたりそれぞれが持っている赤い瞳で目が合ったらとってもきれいだろうなあ〜とその様子を思い浮かべたり絵に描いてみたり、でもやっぱり夜を生きてるときの闇に浮かぶ赤い色をことばであらわしてみたいな〜と思ったりして、久しぶりに字のかたちで物語を書きました。
既に知り合ってはいたけれど親しいと呼ぶほどではなかった数回目の邂逅……くらいのイメージです。この次くらいから、近況報告がてらごはん食べに行ける仲にちょっとステップアップしたかもしれない。
夜の片隅の、不愉快で楽しい一夜。悪人たちの刹那的なたくらみはいつまでも続くかのように思われるけれど、このあとの沼男本編で二束くんは死んでしまうのでそんなことにはなりません。
「あなたたちは親しい仲だ」と指定されたシナリオハンドアウトのおかげで、二束くんと小唄さんは(彼らが望むと望まざるとにかかわらず)運命によって「親しい」ということばで表現される設定をすでに書き込まれてるんですよね。よく考えるとすごすぎる。
私の推しカプ……親しい……!
二束くんのへらへら笑顔はさまざまな打算と嘲笑を覆う薄っぺらい仮面みたいなものであってほしい、という願いがこもっています。二次創作でよく勝手に描いちゃうんですけど、その笑みという名のポーカーフェイスが「おもしれー」や「つまんねえ」によって外れるところが見たくて……。
作中の舞台は、丸の内→六本木/赤坂/乃木坂あたり→新宿へ、みたいなルートを考えてました。小唄さん、カモとのデートにはどのへんを使うんだろう……。あんまり職場に近すぎてもあれだし、銀座とか日比谷ではなさそうかなと思ったり。新橋とか神田とかは嫌いそう。二束くんは逆に、雑踏にまぎれられるならどこでもよさそうですね。
もうね〜〜〜自分で書いてて推しカプが業務連絡してるだけでどうにかなりそうだった。連絡したら「なんでも屋で~す」って出てくれる二束くん良すぎやしないか……(自画自賛)
悪だくみするときとか打ち上げするとき、一度は歌舞伎町にいてほしい。アニメのキービジュアルで赤い看板を背景にしてる絵をもう見たもんね。(存在しません)
作中で二束くんが小唄さんにちょっかいかけたのはなんでだろう、愚か者たちの騙し合いを黙って高みの見物しててもよかっただろうに、と思いもしたんですけど、頼まれた仕事のターゲットに奇しくも小唄さんが関わってきたのが愉快だったんじゃないでしょうか。
小唄さんは二束くんが「そっち行かないほうがいーよ」と言ったとしても絶対言うこときかないだろうし、それも織り込み済みでの接触だったのかもしれない。
悪事の失態の責任は自分で取るわと言ってのける小唄さんのことを、二束くんは少しは「おもしれー」と思ってくれたかな……。
あと、小唄さん、芸名とか源氏名みたいなの持ってたりするかなあ……? そこまできっちり演じてしまうとほんとうに「詐欺」になりそうだから、あくまで罪にはならない範囲で、カモご自身の意志ということにしてお金を巻き上げているのかな。性格悪いな……好き……。
廃業までにどれくらいの人数からいくらの金額を騙し取ってきたんだろう。足を洗ってからも既に手にした資産を手放したりしなさそうなあたり、結局小唄さんは悪い子なんだなと感じられていいなと思います。多少は善いことに還元するかもしれないけど、被害者にはなんにも戻らないもんね。
まんがでもそうなんだけど、毎度ふたりの台詞運びが難しくて頭を抱えます。二束くんこれ本当に二束くんかなあ……? 成り立ってる?
きれいでかわいくて機嫌の悪い小唄さんの乱暴なことばづかいが本当に素敵だし、悪い子どうしの内緒話をがんばって魅力的に書きたい。
思いつく限り全部をかきたいよ。
また近いうちに形にしようと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました!