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    amgoenir

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    嘘予告の過去偽造 ミナさん偽造

    #嘘Yウス
    lieYUs

    嘘Yウス暁の記憶。
    それはドラウスの始まりの記憶。
    母から聞く朝の話はいつもドラウスを夢中にさせた。屋敷を抜け出して市場に出かけた話や突発的に行われたフォークダンスの話、驚くほど不味いスープの話。母の話を聞いていると人々の生活は決して恵まれてるものではなかったけどキラキラと輝いているような気がした。
    「きっといつか人間と吸血鬼が手をとり合って笑い合える時が来る。あの人が僕の手をとってくれた時のように。それが楽しみで仕方ないんだ」
    母は遠い未来を語ってドラウスを優しく撫でた。
    父から聞く夜の話にいつも胸を高鳴らせた。荒野に広がる大地の話やはるか昔に起きた戦いの話、そして人間の作り出す不思議な物の話。ドラマチックで少し怖くて素敵だった。そして最後に
    「人間は弱いから守ってあげなきゃダメだよ」
    そういって父は、眠る母を愛おしそうに撫でるのだ。
    外へ出れずともドラウスは幸せだった。両親が出かけていても、父の使い魔とかくれんぼをして遊んだり山よりも高く積んである物語を読めば、寂しくなんてなかった。三人と二匹、バルコニーから見える星を線で繋いで語り合う、こんな日々がいつまでも続いていくと信じていた。


    紫黒の闇が広がる静かな城に門を叩く音が響く。息が詰まるほど重々しいホールを軽やかに歩く黄色の男。玉座の前でわざとらしく跪き、にんまりとした笑みを浮かべて口を開いた。
    「やあドラウス。私を呼びつけて何の用だい、なぁんて嘘だよ。昨日のことだろ?」
    「ああ。お前の答えが聞きたい」
    昨日、それは特に古い吸血鬼どもの集会があった日。竜の真祖が最後の英雄と相打ちになった決戦の日から一週間が経ち、人間は英雄の遺志を継いで勢いづいていた。逆に吸血鬼達は最強無敵の吸血鬼が倒されたという衝撃から未だ立ち直れずにいた。ロンドンを奪い返され、ヨーロッパ諸国で独立運動が始まりつつある。このままでは新たな英雄を生み出しかねない。それを打破するために七人の吸血鬼が集まったのだ。
    そしてとある議案に対し一人だけ賛成せずに保留と答えたのが、ヨルマだった。
    「ちなみに、反対したら私はどうなるの」
    「反対するのか」
    「質問を質問で返さないと、お父上は教えてくれなかったのかい」
    ゾッと悪寒が背筋を走り空気が重くなる。肺が圧迫され息がしにくい。金魚のフンみたいにくっついてただけのくせに、立派な椅子に座って一丁前に威圧しちゃって。という言葉はさすがに死にかねないので飲み込む。
    「反対したら、どうなる...か。ヨルマ、俺はもう誰も殺したくはない。だからといってお前に俺の催眠は効かない」
    「脅迫かい?平和じゃないね」
    「平和にすませたいんだ」
    ドラウスが提示してきた計画は"人間の徹底管理"。支配した土地では吸血鬼が快楽の限りを尽くし、人口は激減した。不足とまではいかないが人間も限りある資源なのだから増やさなければいけない。今後の食料の安定した供給と品質の向上、その他もろもろをまとめたプレゼンは、ノースディン以外の六人にはそれなりの利益があり悪くない話としてまとまっていた。もちろんヨルマのメリットも大きい。しかし、人々の心を揺さぶることが何よりも愉しいヨルマにとって、その計画はあまりにもつまらなかった。
    「何が不満なんだ。領地か?人数か?前線に出ろって言ってるんじゃない。今まで通りお前クソみたいな遊びも続けられる」
    「人の手垢が着いたもので遊んでもねぇ」
    大きな音を立てて玉座の肘掛けが粉々になって散らばった。全身の毛が逆立ち、ドラウスの怒りを本能が忌避すべきものと思ってしまうほど感じる。それでもヨルマは飄々と言葉を連ねた。
    「確かに君の提案は悪くない。でも私は現状で満足してるんだ。変える必要がない。いいやむしろ変えない方が楽ちんだ。そもそも、あいつの―!」
    "尻拭いなんてまっぴらごめんだね"という言葉はドラウスに手によってせき止められた。崩れ始める玉座。鋭く、小さな声でドラウスは問いかける。
    「ヨルマ、反対するのか」
    時間が止まってしまったかのような静けさの中、ドラウスの手首から血が滴る音だけが響いている。死の淵というのは暗黒沈静で相手のことしか見えない。ヨルマは口角が上がるのをグッと我慢する。ずっとこの瞬間を待っていたのだ。
    閃光弾のように杖が光る。ドラウスは飛び退いてうずくまり、ヨルマを支えていた手が離れた。ヨルマは床に落ちて何度か咳き込むと、酸素が体の中を循環し暗くなりかけていた視界も元に戻った。
    「貴様ッ、何をした」
    「はぁ。ドラウスはごめんなさいも言えないのかい。ほら、言ってごらん」
    「...ごめんなさい―ッ!?」
    ドラウスはまるで自分の意思で言ったのではないというように口を押さえる。
    「ダメだよ。口を押さえたりしたら」
    手が、木偶の坊みたいに離れていく。次の言葉を言われる前に掴みかかろうとしたが、光の速さには勝てなかった。
    「やっと平和的に話し合いができるね」
    ドラウスとヨルマの目線は同じ高さにある。話し合いとは、見上げて行うものでは無い。ドラウスは黙って目を閉じているが彼がヨルマの催眠術を解けるはずがなかった。ヨルマは足を崩して口を開く。
    「さ、秘密を話して。私の答えはその後に教えてあげる」


    ドラウスが何重にも鍵をかけ奥底にしまいこんだパンドラの箱。この世の誰も知らない、黄昏の記憶。

    鶏鳴が響く朝市でフードを深く被ったドラウスは母と手を繋ぎながら歩いていた。母の見ている景色を一目でいいから見てみたかった。だから無理を言って連れ出してもらったのだ。牙を隠すために巻いた布がズレてしまわないように、空いた手でギュッと抑える。話に聞いていたほどの活気はないものの、城の中では見ることの叶わないものが立ち並んでいた。
    「いいかいドラウス。リンゴを買ったらすぐに帰るからね。それまでいい子にできる?」
    「はい。お母様」
    川沿いの道を迂回して足を進めれば次第に店の数も増えていく。母の話に出てきたもの、本の中に出てきたもの、想像もしたことがないもの。あれは何?これは何と母の手を引いて聞きまわる。朝日なんて気にならないほど興奮していた。

    「ねえ、あれハーカー家のお嬢さんじゃない」
    「やだ。悪魔憑きの」
    「じゃあなに、あの子供ってそういうこと?」
    呼び込みをする声の中に紛れて聞こえてきたヒソヒソ話。ドラウスはちらりと母の様子を伺う。「どうしたの」と覗いてくる顔は逆光でよく見えない。
    「朝日が少し出てきたので早く行きましょう」
    俯きながら、駆け足で道を進んだ。
    昔、父に尋ねたことがある。なぜ人間はいもしない悪魔に怯えてるの、と。
    「ドラウスも、オバケが怖いでしょ?怖いっていうのは、知らないこと。人間は知らないことが沢山あるから怖いと思う。それも知らないから、悪魔という架空のものを作る。ドラウスのオバケと一緒」
    「お母様がオバケを怖がらないのは、物知りだから?」
    「ミナは特別」
    あの日から、ドラウスにオバケは見えない。しかし人間が生み出した悪魔はより具体的になっていた。悪魔は魔女を生み出し、大軍を率いて征服してくる。存在しないものから、存在するものに責任を押し付けるようになった。同じでないものは悪いものにたぶらかされてると、排除しようとする。だから母は"悪魔付き"なんて言われてしまう。
    「僕は大丈夫だよ」
    ハッと顔をあげる。母の顔はやはり影になって見えない。
    「ご、ごめんなさい...」
    「どうして?ドラウスは何も悪いことしてないだろ」
    木陰に入ってやっと表情が見えるようになった。いつも通りの明るい顔で、ドラウスを抱きしめるともう一度大丈夫と言った。
    「ドラウスが引っ張ってくれたからもうお店に着いちゃった!リンゴを買って帰ったらすぐにアップルパイを作ろう。ドラウスはここで休んでて」
    母が一つ一つリンゴを手に取り選んでいるのを眺めながら、川のせせらぎに耳を傾けていると急に眠気が襲ってくる。忘れていたがいつもは寝ている時間だ。せめて城に帰るまでは起きていないと、母にさらに迷惑をかけてしまう。ドラウスは頬を叩いたり屈伸したりして目を覚ましていた。
    「さっきから何してんの?」
    降りてくる瞼と格闘していると見知らぬ男の子が急に話しかけてきた。母以外の人間に話しかけられるのは初めてで、ドラウスは口ごもってしまう。
    「なんで無視するん?てかなんで布巻いてんの??」
    「え、あ、歯が抜けて、かっこ悪いから」
    用意していた言い訳を捻り出せば、男の子もお揃いじゃん、と口を横に広げた。本当に歯がない。帰ったらお父様に教えてあげよう。
    「俺も布巻きたい!貸してよ!」
    歯の奥を注視していたせいで、ドラウスは横から伸びてくる手に反応できなかった。
    口を閉じてても見える大きな牙を隠すように手で覆う。一瞬見えたその牙に驚いた男の子は目をキラキラさせて叫んだ。
    「かっこいい!」
    予想外の反応にドラウスも驚いた。怖がられてしまうかと思ったが、そうじゃないようだ。
    「ほんと?」
    「うん!超かっこいい!」
    嬉しくて、つい手を下ろしてしまった。その男の子の母親が来ているとも知らずに。
    「あ、あぁ、なんて恐ろしい。悪魔よ!やっぱりあの子供は悪魔だったのよ!うちの子に近づかないで!!」
    男の子の母親はヒステリックに叫んだ。市場の人々の目線が全てドラウスに注がれる。ドラウスは逃げようにも、視線に絡められて動けない。一瞬の静寂。ただ恐怖だけがその場を支配していた。
    「ドラウス!!逃げるよ!」
    ドラウスは母に手を取られ走り出す。前のめりになった体を起こして、小刻みに震える足を懸命に動かした。人々は一泊遅れて動き出す。ドラウスは恐怖に駆られ逃げ惑う人々を押しのけて恐れずに進む母の手をしっかりと握っていた。
    まだ一分も経っていないのに街に悲鳴が響き渡っていた。そんな中、一人の勇ましい声が轟いた。恐怖という感情は乗っていない、街を守るため命を捧げた傭兵の声だ。
    母は間一髪のところで止まり、傭兵が振り下ろした剣を受けることはなかった。
    「せーので横にジャンプだ。そしたら走るよ」
    傭兵はもう一度剣を構える。三人の雰囲気に気圧されて近づくものなど誰もいない。遠くから聞こえる悲鳴すらドラウスには聞こえていない。耳と足とつないだ手だけに神経を集中させていた。
    「うぉおおおお!」
    傭兵の掛け声。一歩踏み出したその奥に散らばる逃げ出した人の痕跡。落ちたずた袋は無数の豆を撒き散らしていた。

    「7291」

    運命というものは一瞬で決まりで、スローモーションで流れるほど劇的では無い。ドラウスは母に押し倒されて地面に頭をぶつけた。
    「おかあ、さま?」
    荒い呼吸、鉄の臭い、痛いほど握られた手が意味するものを、理解できない。
    「...ドラウス。母さんは、大丈夫だから」
    震える体と不規則に上下する胸。ドラウスを庇った影から出る声は震えている。
    「人を、恨まないで」
    「――なんで」
    「あの人、にも...そう伝えて」
    ドラウスを覆う影が重なる。脇に見える男の足、耳障りの悪い神の声。突き立てられた剣が母を貫き、母は剣を抱いて横に倒れる。ドラウスの服はじわじわと赤く染まり、地面には生暖かいベタベタとしたものが広がっていく。朝日が痛い気がする。熱いような、寒いような。何が起こったのか、よくわからなかったが、とにかく、母を助けなければ。倒れた母を抱き抱えて叫んだ。
    「―っおとうさま!お父様、助けて。助けて!!」
    ドラウスに三人目の影が落ちる。それは一瞬のことで、人々は突然現れた男が纏う空気に狼狽えることすらできない。闇を引き連れた父が母の前に立つと、目を見開き振り返る。
    「かくも虚しき愚かな人間よ。己のが行為を悔やむがいい」
    蒼穹は宵闇に包まれ黄昏すら訪れないこの街に朝日を望むものは、もういない。
    そうして、夜は始まった。


    ポツリ、ポツリと零れた言葉は、あまりにも衝撃的なものだった。何百年と続く戦争を始めた男は人間を愛し、最愛の人は人間に殺された。これはただの復讐だ。この親子の復讐に全世界が巻き込まれてる。なんという事だろう。シェイクスピアもこんな作品は書けない。ヨルマは前のめりになってうなだれるドラウスの顔を覗く。
    「ドラーウス!君は人が殺されるのが嫌なんだ。そして人を殺す度にお母様が囁くんだろ?どうしてこんなことするのって。ふ、あははっ!しかも、君は人と共存することを諦めてない。それで出てきたのが、人を管理するだって??滑稽だ!最高だ!!」
    大きく手を叩いて、ヨルマは続ける。
    「あいつらは君のエゴを満たすために利用されたに過ぎないなんて。――ノースディンは知ってるのか?このことを?」
    「知らない」
    「そうだよねぇ。話せるわけないよね。ノースディンは君のことを好いてくれるけど、愛してくれないもの。本当の自分を知られるのが怖いんだよね。人間を護りたいなんて言ったら、ノースディンは君のことを許さないよ。きっと。騙したなって」
    ドラウスは俯いたまま、ヨルマの問いかけに淡々と答える。もう催眠など切れているというのに。こんな最高の材料を前にして、ヨルマは胸の高鳴りが抑えられない。壊すも治すもヨルマの調理次第。さてどうしてやろうか。
    「結局、私たち、いや世界が君たちに振り回されてるわけか。本当に、心底君たち一族が嫌いだよ。君は考えなかったのかい?あの時、すぐに布を奪い返していれば、そのガキを殺していれば、外に出なければって」
    ドラウスは無反応だ。あと少し、いや実際もう壊れているが、やるなら完膚なきまでに壊してしまいたい。ヨルマは、力なく垂れた髪を鷲掴み目を合わせる。
    「ダメだよ。黙っちゃ。私は怒ってるんだ」
    「...そうか」
    ヨルマはパッと手を離す。こいつ、赦されようとしている。ヨルマの催眠を言い訳に告解してるつもりだ。
    「なぁんて怒ってない。怒ってないよドラウス。だいじょうぶ」
    ぐしゃぐしゃになった髪を整え、甘い言葉を囁けば、また目に失望の色が浮かぶ。本当は人間に降伏でもして終わらせたいんだろう、この戦争を。しかしドラウスには護るべきものがあり、人間にされた仕打ちを、してきた仕打ちを家族にされたらと思うとそんな提案はできない。
    「それよりも君、これを知ってるやつら殺しただろ」
    「ああ、だって知ってたらいつか邪魔になるから」
    「うんうん。そうだろうと思った」
    竜の子が聞いて呆れる。しかし、そうやって自らを追い詰めていくドラウスはそれ以上に面白い。行き着く先が地獄と知ってか知らずか、歩み続ける姿に興味が尽きない。
    「はぁ、今なら君とセックスできるよ。これ程昂ったのはいつぶりだろう。してみるかい?」
    「なんでもいい」
    ヨルマはドラウスの唇を指でなぞる。この吸血鬼の所有者はもういない。心も体も、なんて。いややめておこう。この行為が贖罪にでもされたら最悪だ。
    「じゃあ君が今日話したみたいに乗り気になったら誘ってくれ。...それはそうと君への返答だが、賛成してあげる」
    「ああ」
    「あとこのことは誰にもばらさない。私は秘密主義なんだ。」
    ヨルマはドラウスに背を向けて歩き出す。今日はいい夜だ。
    「覚えておいてドラウス。君のことを真に愛してあげられるのは僕だけだってこと」
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    DONEアイスバースロスモ。去年書いたやつを修正したやつです。死にません。
    そしてまた、二人は出会う。その日はうだるような暑さだった。ジュースに入った氷も一瞬で蒸発してしまうような、そんな日だった。

    「スモやん冷てえ。最高」
    ベタベタと男が男に張り付いていた。まさに地獄絵図。たしぎはドン引き。スモーカーは青筋を何本も立て拳を握り、ドカドカ殴りかかっていた。海兵の汗で沈没しそなほど異常に暑い中、冷たいと言われた男は汗ひとつかいていなかった。
    スモーカーは、体温が異常に低い体質をしていた。世間ではそれをアイスと呼ぶ。アイスは数千人に1人の割合で生まれる珍しい人間だ。気温に左右されず汗もかかなければ凍えもしない。生まれた時から低体温を保ち続ける。そんな体質だ。そして対となるジュースと呼ばれる体質がある。こちらは数万人に1人生まれるかどうかというアイスよりも希少な人間だ。ジュースは普通の人間とほぼ同じ。しかし決定的に違うのは、恋愛を封じられたことだった。ジュースは特定のアイスにしか恋心を抱けない。しかしそのアイスと結ばれた時、アイスは恋という熱で溶けて無くなってしまう。ジュースはその時初めて、自分がジュースだと自覚できる。出会ったが最後、永遠にひとつになることの無い悲しき運命を背負っていた。
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