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    shigu_39ra

    @shigu_39ra

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    shigu_39ra

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    潜入(実戦?)部隊の彰人×諜報(参謀?)部隊の冬弥さんのお話
    ゾゾ彰冬で書きたかったが、あまり活かせなかった産物(ド正直)

    おかえりなさいに込めた意味⚠️一応補足しておく注意事項⚠️
    ・一瞬ちらっとですが司先輩がでます。
    ・冬弥さんは狙撃の名手だが、人に対して撃てないため参謀役として組織に籍を置いている。
    ・これは、「冬弥さんが落ちた時は彰人が光の元に力強く引き上げてくれ隣で一緒に進むし、彰人が少しでも沈んだ時は冬弥さんが優しく包んで寄り添って前を向かせてくれる」という考えを持つオタクが書いています。彰人がモヤモヤしてる描写が軽くあります。


     かつん、と靴の音が響く。
     埃や黴の匂いが充満する倉庫には、何に使われるのか見当もつかないような麻袋や木材等が人一人の身長を軽く越してしまうくらいの高さに積み上がっていた。
     錆びた鉄の柱に背中を預けて、彰人は息をゆっくりと吐いた。
     最近暖かくなってきたとはいえ、日が沈めばまだ肌寒い季節。外気の寒さもあってか、日が陰る倉庫内は更に温度が下がっている。
     戦闘スーツのポケットに忍ばせていたタブレットを取り出し、現在地と目的地を確認する。
     目的の場は遠くはないはずなのに、そう広くはない倉庫内で視界が悪いせいかそれを見つけることが出来ずに彰人は眉を寄せた。
     今回の任務は、この世間では使われていないはずの古い倉庫を拠点とする組織の情報調査と、それに関わる機密を持ち出すこと。
     決して普段の血なまぐさい任務に比べれば難しくはないものだが、どれだけ視線を這わしてもその現場を見つけることが出来ず、彰人は少しばかり焦りを感じていた。
     長居は禁物。組織の者が倉庫にいないとも限らない。落ち着け、焦るな。情報を持ち出すだけの任務が故にわざわざ戦いを交えるなんて面倒なだけなので出来れば御免蒙りたい。
     それはさておきどうしたもんか、と薄暗い倉庫内で光るタブレットを見つめていると、耳に、ジジッ、という音が鳴った。

    『どうした彰人、大丈夫か?』

     外のワンボックスカーの中で待機している、諜報班である冬弥の心配する声がイヤモニ越しに彰人の鼓膜へと届く。
     静かすぎる倉庫内ではそれさえも響いてしまいそうな気がして、彰人はそれを耳に少しばかり指で押し当てた。
    「あー、悪い。少し手こずってて、なかなか見つかんねーんだよ」
     ぼそり、とマイク越しに呟く。
     それは吐息とも思える程の些細な声だったが、最新鋭のマイクにはそれも充分通っていることだろう。
     手の中のタブレットがぶるり、と振動し、彰人はそれに目を向けた。送り主は勿論イヤモニ越しの冬弥だった。
     特にメッセージは無く、送られてきたのは倉庫の設計図。そこに星印がついて点滅している場所があるとこを確認する。
    『彰人が今いる場所からそのまま真っ直ぐ、突き当たった所に扉があるはずだ』
     そこは先程何度も見て回った場所だったが、まさか隠し扉があろうとは。初歩的な判断ミスに彰人は小さく舌打ちする。
    「くそっ、・・・悪い、手間かけさせた」
    『いや、視界が悪い中探すのは誰でも難しいことだ。気にするな』
     そうは言っても多少の焦りから生じた自分の判断ミスに苛立ちを覚えてしまう。荒れる心中を少しでも沈めるべく一度息を吐く。
     今ここで過去の自分を恨んでもただ無駄な時間が過ぎるだけ。その過ぎた分だけ任務が困難になり、デメリットが生じる。反省などは帰ってから幾らでも出来る。今は目の前の任務に集中しなければ。
     そう頭を切り替える為に先程より深めに息を吐いてから「サンキュ」とマイクに呟いた。
    『あぁ、少しは落ち着けたか?』
    「おう、設計図と扉の場所も助かった。流石オレの相棒だな」
    「そうか、それなら良かった」
     きっと表情は変わっていないだろうが、先程より声が少しだけ柔らかくなったことを彰人は聞き逃さなかった。彰人の口から無意識下に出るその冬弥への圧倒的信用と信頼を表した二文字を冬弥は嬉しそうに受け取る。そんな冬弥に彰人もまた胸の奥が暖かくなるし触れたくなるのだ。
     早く終わらせて帰んねぇとな。
    『よし、んじゃあ、行ってくる』
    「あぁ、気を付けて。…彰人、『行ってらっしゃい』」
     いつも、冬弥は任務で彰人が何処かに潜入するときには、必ず「行ってらっしゃい」と告げる。
     彰人にとってそれは、背中を押してくれているようにも感じるし、生きて、自分の元へ帰ってきてくれ、と励まされているようでもある。その送り出す言葉を受け取ったならば意地でも「ただいま」を言いに帰らなければ。
     暖かい何かに身体の奥底から包まれている安心感を感じながらタブレットの液晶を消してから腰のポケットに差し込み、足を進めた。

    ***

     冬弥の指示した場所へ歩みを進めると、辺りは埃が被り真っ白になっているにも関わらず、ある一箇所だけが綺麗に見えた状態なのを見つける。
     良く目を凝らさなければ薄暗い中で見つけることは出来ないが、それでも彰人はそれを見落とした先程の自分に嫌気がさした。
     こんなに近くにあったなんてな。
     そう自嘲した所で今が変わることなんてねぇけど。彰人は心の中で自分を責めながらも、いや、反省は帰ってからだ、と気持ちを切り替えた。
     壁沿いに手を滑らせると、ある一点だけが小さく凹んでいた。
     ここだ。冬弥の言っていた隠し扉。
     確認を行ってから彰人はほんの少しそれを右へスライドさせた。
     細く開いた扉の隙間から光りが漏れ出る。おそらく組織の拠点となっている部屋だろう。その隙間から片目で中を覗き込むと、どうやら無人のようだった。
     細心の注意を払いながら、ゆっくりと扉を開く。その間もどくどくと脈打つ心臓がうるさい。ようやく自分の身体を滑り込ませることが出来るくらいの隙間が開くと、音も無く扉の奥へその身を入れた。今まで自分が身を潜めていた倉庫とは違い、その中は組織拠点と呼ぶには相応しい事務所のような作りになっていた。
     手前にはソファが設置され、その奥にはパソコンが置かれた大きなデスクがある。薄暗い倉庫から入ったせいで光りに慣れない目を細めながら、歩みを進めそのデスクに向かった。
     パソコンの中身を持っているチップに移せば、任務は完了。
     いつ組織の人間が戻ってくるかも分からないこの状況。
     彰人は早急にパソコンを立ち上げ、カタカタと操作する。難解なロック等はされておらず、組織の参謀役として活躍している冬弥から教わり、少し齧った程度の知識しか持ち合わせていない彰人だったが、簡単な暗号の解読だけで目的のページは現れた。
     しかし、順調に事が行き過ぎている。そう頭の片隅で思うが、今はそんな時間も惜しく感じてしまう。
     チップを差し込み、データを移行させる時間がとてつもなく長く感じるのは、今に始まったことではない。彰人は焦る気持ちを抑えながら、指先で机をとんとん、と何度も叩き画面を見つめる。
     落ち着け、焦るな。
     あと、一分。
     ちらり、と事務所にある掛け時計を確認した瞬間。
     パン、と響き渡る銃声と、頬を掠った何か。それが何かを理解する前に彰人はパソコンに指していたチップを抜き、咄嗟にデスクの下へとその身を滑り込ませた。
    『…あき、と…?彰人!』
    「……っ、」
     焦る冬弥の声が聞こえたと同時に頬に走る痛み。たらりと頬に垂れる血液を手の甲で拭い、デスクの影から見やるとどうやら組織の人間の内の一人が戻ってきてしまったようだ。なんともタイミングが悪い。
     相手は一人。しかし、十中八九全てのデータは移せていないだろう。もう一度差し込めるか?いや、この状況で残りのデータを移すことは困難を極める。中途半端な任務になってしまうことを懸念しながら、彰人はどうこの場から脱出するか、頭の中で様々な思考を繰り広げた。
    『彰人!あきと!!返事をしてくれ…!』
     早く抜け出さなければ、いつ他の人間が戻るか分からない。
     そう考えていると、耳に冬弥の声が響いた。
    「冬弥、オレは大丈夫だ。……だから、そのままもう少しだけそこで待ってろ」
    『っ!』
     イヤモニ越しに聞こえた布擦れや武器が乱雑にぶつかる音などの雑音と、冬弥の様子からして、こちらに助けに向かおうとしていたことが手に取るように分かった。
    「だがっ、」
    「すぐ帰っから、な?」
    「…………分かった。」
    『ん、』
     イヤモニ越しに聞こえる冬弥の声が少しばかり震えているのがわかった。
    『机の後ろ、彰人の目の前の窓は外に通じてる。状況的になかなか難しいとは思うがそこから脱出できる』
    「わかった、サンキューな」
    「…彰人、はやく…帰ってきてくれ、』
    「あぁ、わーってるよ」

     彰人はパソコンから抜き取ったチップを胸のポケットに入れ、今度は腰についたポケットから銃を取り出す。
     相手は、こちらの出方を伺っているのか、相手が銃を構えたまま動く気配は無かった。素早くデスクの影から身を半分だけ出して相手のすぐ隣、当たるか当たらないかの場所を狙って狙撃をする。相手の意識を逸らすための威嚇射撃。我ながら良いところに撃てたと思う。狙撃のコツを教えてくれた冬弥には感謝だな。
     相手がソファの影に隠れたタイミングで彰人は反対の窓を狙い打ち、そこを足で蹴破って外に出た。
     外に敵が待ち構えているかどうか半ば賭けではあったが、取り敢えずの所人影らしきものはない。運がいいのか悪いのか。まぁ、いたとしても外に出てしまえばイヤモニ越しの相棒が手伝いに来てくれるだろう。
     後ろから銃声が響き渡る。
     彰人は全身の力を足に集め、風を切り走った。心配性の恋人が待ってるんでな。

    ***

     息を切らせ、冬弥の待つワンボックスカーに乗り込むと、ドアが閉まるか閉まらないかの間際で、冬弥の「出してくれ」という言葉と同時に車は発進された。
     彰人は肩を上下させながら酸素をめいいっぱい体内に必死に取り込みつつ、後ろを振り返る。どうやら、追手は来ていないようだ。
     その確認が済んだ所でやっと彰人は息を深く吐きだした。目をきゅっと瞑り、咥えていたチップを強く握り締める。殆ど、失敗のようなものだ。彰人は今回の仕事の成果に落胆し、オレンジの髪を掻きながら溜息を吐いた。
    「お疲れ様、彰人」
    「…あぁ」
    「…苛立って、…いや、落ち込んでる、のか?」
    「…どっちも、だな」
     中途半端が嫌いな自分が一番中途半端な仕事をしたのだ。どうしたって心中は荒れてしまう。やっぱり多少無理をしてでも全ての情報を…。
    「彰人」
     不意に名前を呼ばれ、伏せていた目を開ければ、隣で礼儀正しい姿勢で座っている冬弥が彰人の顔を覗き込み、真っ直ぐに彰人の蜂蜜色の瞳を己のアイスグレーに捕える。
    「全部じゃなくとも半分は取れたんだろう?」
    「あー、まぁ」
    「十分だ。それに俺としては彰人が帰って来てくれたからそれだけで嬉しい」
    「……そーかよ」
     そうは言っても今回の仕事の成果は変わらない。もっと注意力やスキルを磨かなければいけない。しかし、先程まで落胆やら苛立ちやらが混ざり合いぐるぐるしていた胸の奥が冬弥の素直な言葉で暖かく包まれていく感覚に陥る。。
     かなわねぇなぁ。
     彰人は隣に座る冬弥に肩を預け、己の体重半分をかける。それに対して重そうにする所か冬弥は寄りかかっているオレンジの髪に嬉しそうに擦り寄ってくる。
    「…次はぜってー全部取ってくる」
    「あぁ、よろしく頼む。」
     組織への帰路に着く車体が揺れ、振動によって座席に沈んだ身体をそのままに彰人は目を閉じると、思いの外緊張の中で疲弊していた身体は冬弥の肩から感じる低めの体温に心地良さを感じ、そのまま瞼を暗くさせた。

    ***

     カタカタと、何かを叩く音に彰人は沈む思考を浮上させた。薄らと目を開くと室内は暗く、デスクの上に置かれた照明のみが点けられていた。
     自分が横になっているのが、二人が共に生活をしているマンションだと理解し、彰人はゆっくりと身体を起き上がらせ、デスクに向かう冬弥に歩み寄ると首に腕を回し、苦しくないように軽く締める。
     突然首に感じた体温に一瞬手を止めた冬弥だったが、それが彰人によって与えられたものだと把握すると再び再開させる。
    「おはよう、彰人」
    「はよ。冬弥が運んでくれたのか?」
    「いや、司先輩だ」
    「げっ、よりにもよって…」
     思わず嫌悪の言葉をあげてしまい「こら、」と咎められてしまった。
     曰く、組織に到着後、車から運ぼうとは試みたが冬弥とオレでは筋肉量が違うせいか持ち上がらなかったらしい。そこに別の任務から戻った司が通りかかり、どうせなら、と自宅まで運ぶのを手伝ってくれたそうだ。
    「後ろに予定はないから大丈夫だ、と言われ、好意に甘えてしまった。後でお礼に行かなくては」
     冬弥はパソコンに目を向けたまま、眉を八の字にしてため息を吐いた。
     決して目が悪いわけではないが、冬弥はパソコンを操作する際にブルーライトカットのメガネを愛用している。幾度となくその光景を見ているため、見慣れているはずだが何度観てもその綺麗な横顔は彰人の心臓を煩くさせる。

    「そういえば、どうだ?」
    「ん?あぁ、彰人のおかげで八割方取れてる」
    「…八割、か」
    「あの状況下なら十分だ。あとは任せてくれ」
     忙しなくキーボードを打ちながら、冬弥は数字やアルファベットの羅列を乗せる。
     それは、彰人にとってみれば殆どが意味の分からないものだったが、その様子を冬弥の座るチェアの背もたれに肘を乗せながら見守っていた。
     たん、とエンターキーが押され、冬弥はふぅ、と息を吐き出すと、掛けていたメガネを外し、キーボードの脇に置いた。
    「よし、これでいいだろう。ボスもきっと満足してくれるはずだ」
     冬弥は凝り固まっているだろう肩を解すために軽い伸びをしてからノートパソコンの電源を落とした。
     冬弥の言葉に彰人の思考はモヤモヤと、自分の失態や完璧に仕事がなせなかった自責の念が巡る。
     今度からはマップを完璧に頭に入れて置かねぇとな。そんで今回みてぇに隠し扉があるかもしれねぇからそれがあるだろう箇所にも目星を付けて…。
     眉間に皺を寄せ、ブツブツと今回の反省を並べているとくるり、と冬弥の首が回され、彰人と目が合った。
    「あきと、」
     冬弥がふわりと可愛らしい笑みを浮かべながら彰人に向かって両手を伸ばす。
     どうやらオレの愛しい相棒はハグをご所望らしい。
     求められたら与えないわけにはいかまい、と座っている冬弥の首に今度は前から腕を回してそれに応える。
    「いきなりどうした」
    「いいや、ただ、努力家の彰人を抱きしめたくなっただけだ」
    「なんだそれ」
    「それにまだ、『おかえり』をしていなかった、と思ったから」
     冬弥は彰人を見送るとき、必ず「行ってらっしゃい」を告げる。
     同じように無事に帰ってくると、「おかえり」と抱きしめ、口付けを交わすのは二人の間では儀式の如く当たり前に執り行われているものだった。
     彰人はまだ心中をモヤモヤとさせながらも、顔に掛かる前髪をそのままに目の前の青に交ぜるとゆっくりと冬弥の唇へ、自分のそれを重ねた。
    「ただいま」の意味を、たっぷりと込めて。
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