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    アキロウおじさん

    @merry_pankpop

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    @merry_pankpop

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    水笛を買い、吹く利狂くん(13歳想定)を見るモブ視点。
    文字書くの5億年ぶりだから許して

    クリアプリズム蒸し暑い、夏祭りの夜だった。

    友人たちと連れ立って行った夏祭り、公園内に所狭しと並んだ屋台を一通り眺め終わった僕は、皆とかき氷などを買い、広場のベンチに落ち着いた。
    日が落ち切っても気温はまだ高く、額から汗が落ち、背中がじっとりと濡れているのを感じずにはいられなかった。
    僕だけではなく友人全員が同じだったようで、暑さと祭りを堪能した疲れから少しだけ口数は少なくなり、自然と並んだ屋台の、それに沿って並べられた提灯の強い灯りに照らされながら祭りを楽しむ人の行き来をただ眺めた。

    僕たちが座るベンチから数件奥の屋台に、水笛が売っていた。
    鳥の形をしたクリアカラーのプラスチックの笛の中に、カラフルなビーズが入れ込まれている。水を入れて吹くだけ、いかにも子供が屋台でほしがるような安っぽいおもちゃだった。実際に僕も小学低学年の頃に手に取ったっきりだと思う。
    その子供向けの玩具を扱う屋台の前に佇む人がいた。
    見覚えがある。同級生の三次だ。多分、利狂の方だろう。
    多分、というのは同級生の三次が2人いるからだ。2人はインフルエンサー型ハンデッドの双子で、何かと目立つ存在だった。
    飛びぬけて頭がいいが何を考えているのかわからない利狂。
    活発で誰とでも打ち解け、明朗快活な駆。
    双子なだけに見た目にほとんど同じ2人だが、どういうわけか性格は正反対で、見分けるのはある程度の付き合いがあれば難しくはなかった。
    僕は弟にあたる駆と仲が良く、すぐに彼が利狂だと分かった。駆は祭りが大好きで、こういう時は食べ物に目が行くタイプだ。すくなくとも水笛をじっと見ることを彼はしないだろう。
    駆は来てるのかな。
    利狂に声をかけようかと考えて、そこで思考が止まった。
    色とりどりの水笛に照らされる横顔は、少しだけ微笑んでいた。駆よりも白い肌が光っている。瞳が揺れている。
    どちらかといえば無表情な利狂の、見たことがない表情に胸の奥で何かがざわめく。
    まるで宝石を眺めているかのように嬉しそうにプラスチックの水笛を上から下まで、右から左までくまなく眺めて、その内屋台の主に声をかけ、水笛を二つ、手に取った。
    受け取った水笛を手に少し周りをきょろきょろと見まわした利狂は、露店の並びをそのまま歩くのではなく、祭りの気配の無い芝生の方へと歩き出した。

    祭りの灯りが届き切らない暗がりの中、利狂の白い肌はぼんやりと発光しているのではないかと思うほどによく目立つ。足元を気にしながらか、ゆっくりと歩みを進めてたどり着いたのは水飲み場だった。
    祭りの空気に置き去りにされたその蛇口を捻り、細く出した水流に光るものが差し出される。先ほど買った水笛だ。
    水を入れてより一層光るそれを慈しむように眺めた後、透明な鳥についた雫も、自身の濡れた手もぬぐわず、そっとその笛に唇を寄せる。
    少し離れた僕の耳に、その唄口から漏れ出る音が聴こえてくる。

    ひゅる。
    ああ、それは少し弱い。
    びい。
    それは強い。

    利狂はそこで笛から唇を離した。吹口も濡れていたのか、そこから離したままの形で少しだけ開いた唇が濡れている。その艶が見えた瞬間、胸がもう一つざわめいた。
    もう一度、吹き口に濡れた唇が縋るように近づいていく。
    ぴよぴよ、ぴよぴよ。
    確かにこの時間にいるはずのない鳥のさえずりが聴こえた。そうして公園の暗がりで嬉しそうに水笛を眺め、また数度さえずる。
    ―――――目が離せない。三次利狂とはこんなにも目を引く存在だったか?
    「おー、いたいた」
    あまりに見慣れない利狂の姿より、随分と聞き慣れた声がした。暗がりで囀る小鳥と同じ姿をした少年が駆け寄る。
    駆だった。祭り好きの駆が利狂を置いて先に走り出したのか、マイペースの利狂が駆の知らぬ内にどこかへ消えていたのか。ともかくやはり2人で来ていたのだろう。
    利狂がもう一つの水笛を駆に差し出しながら何か興奮気味に話しているのが見える。心なしか嬉しそうにその話を聞きながら差し出された水笛を受け取った駆が、突然まだ話を続ける利狂の右手を掴んで引き寄せた。
    お互いの顔が頬をすり合わせる程近づいて、利狂が先ほど吹いていた水笛の吹口に駆の唇が触れて、その唄口から先ほどよりも力強いさえずりが暗がりに響いた。
    弾みに転びそうだった利狂の腰を駆が抱いて、額をすり合わせるみたいに顔を近づけたままで何かを話した二人は、そのまま暗がりの先の祭りの灯りの中に、手を繋いで消えて行った。

    周りの音が聴こえないほど、胸から聴こえる音が大きくて、追いかけて駆に挨拶するなんてことはできそうになかった。
    明日から、あの二人とどんな顔であいさつをすればいいのだろう?
    かき氷はすっかり融けて、カップからぽたぽたと落ちる水滴が僕の靴を濡らしていた。
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