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    ryukaget

    @ryukaget

    思いついたけど書けない・書かないネタの供養場所兼進捗置き場。人を選びそうなのとかエッチなのはワンクッションします

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    ryukaget

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    やっと書き始めたので

    二人ぼっちの110と カイドウと百獣海賊団を結成したアルベル改めキングは、とある港に錨を降ろしたところで厳めしい顔を更に険しくさせているカイドウに気が付いた。
    「カイドウさん……?」
     一体何が彼の神経を逆撫でているのかまるで検討もつかない少年は、鎧兜から覗く赤い瞳をパチリと瞬かせる。
     結成してからというもの数々の海賊船を襲い、またキングの出自に目が眩んだ賞金稼ぎ達を海の藻屑と変えていった二人は未だ二人だけの海賊団として活動していた。キング自身はカイドウと共に居られればそれに越した事はないが、世界を変えるという目標を掲げているのだからいつまでも二人という訳にもいかない。そろそろカイドウの目に叶う者達が現れてくれないものか、とキングは当初こそ思ってはいたものの、カイドウが欲していない上にキングはカイドウとの二人旅が存外気に入ってしまっていた。人員については近々に解決せずとも現状維持でもなんら問題ないかもしれない。それに人数が増えればそれに伴って船や身の回りの物を整えなければいけなくなる。ならばある程度の規模をもった海賊船を襲って丸ごと併呑してしまうのも手か。とキングは考えを巡らせた。カイドウの眼鏡にかなう一団がいればいいのだが。などと溜息を吐いていた矢先、他に碇泊している船舶を睨め付けるカイドウの姿を目にしたキングは小首を傾げた。カイドウにならい、キングも整列している船を見渡すが、その原因は依然として分からない。外界と隔絶された日々を過ごす事を余儀なくされ、知り合いどころか家族すら存在しないキングと違い、カイドウには少年と出会う前までに歩んできた軌跡がある。その過去を想起させるものがあったのかと、兜の中で無意識に眉根を寄せた。
    「――なんでもねェ」
     行くぞキング。そう言って忌々しいと言外に語る舌打ちを繰り出した黒髪へと曖昧に相槌を打ちながら、テキパキと碇泊準備を終えたキングは大股で歩くカイドウの大きな背中を追いかけた。黒い羽を背負い、人目に触れないよう兜の内に隠れた真紅の瞳は、背後ではためく特徴的な髭が描かれた海賊旗には終ぞ気付く事はなかった。

     ガヤガヤと賑わう大通りを練り歩くカイドウに負けじと追いすがったキングは近寄りがたい雰囲気を醸し出すレザージャケットに視線を送る。大人と子供である二人の歩幅はその関係を如実に体現しており、突き進むカイドウに置いて行かれぬよう、キングの足取りは自然と小走りになってしまう。ガコリと鎧兜の鈍い音が聞こえるが、外れなければさして問題ではない。肌を見せないよう包帯が巻かれた手でぶかぶかの兜を押さえては、大きな背中を見失わないよう人混みを掻き分けていく。
    「――ッ」
     ぐい。と腕が大きく引かれ、鎧兜を被った少年は蹈鞴を踏んで裏通りへとその身を滑り込ませた。否、引き摺り込まれたという事実に、キングの身体へ緊張が走る。恐らく背中から生えた羽根が物珍しいからと金目当てのならず者がしでかした事だろうと適当に当たりをつけた真紅の瞳に軽蔑の色が宿る。そんな程度の人間など、恐るるに足らず。燃やせば目立つだろうから、腰に佩いた獲物で袈裟斬りにでもしてやろうと腕を伸ばしたところで小さな影がキングと男の間に割り込んだ。
    「」
     キングの腕を掴んでいた荒くれ者の手が勢いよく弾かれる。
    「ぐェ……ッ!」
     潰れた蛙じみた哀れな声を上げた男を余所に、包帯だらけの腕を掴んだ小さな手にキングは再び目を見開いた。
    「見ちまったからには捨て置けねェよい」
     かけられる大人びた言葉とは裏腹の子供の声。だが外連味の欠片もない動きに驚いたキングの腕を取った少年は路地から飛び出した。
    「な、なにもんだてめェ!」
    「へへ……誰だっていいだろう! ――こっちだ」
     怒声を上げた男を遮った声に導かれ、人の波を縫うように先へ先へと脚を動かす。その背中を視界におさめたまま闇雲に走り出せば、ガコリ。ぶかぶかの鉄兜がそのスピードに置いて行かれぬよう派手な音を立てて追いすがった。
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    ryukaget

    PROGRESSやっと書き始めたので
    二人ぼっちの110と カイドウと百獣海賊団を結成したアルベル改めキングは、とある港に錨を降ろしたところで厳めしい顔を更に険しくさせているカイドウに気が付いた。
    「カイドウさん……?」
     一体何が彼の神経を逆撫でているのかまるで検討もつかない少年は、鎧兜から覗く赤い瞳をパチリと瞬かせる。
     結成してからというもの数々の海賊船を襲い、またキングの出自に目が眩んだ賞金稼ぎ達を海の藻屑と変えていった二人は未だ二人だけの海賊団として活動していた。キング自身はカイドウと共に居られればそれに越した事はないが、世界を変えるという目標を掲げているのだからいつまでも二人という訳にもいかない。そろそろカイドウの目に叶う者達が現れてくれないものか、とキングは当初こそ思ってはいたものの、カイドウが欲していない上にキングはカイドウとの二人旅が存外気に入ってしまっていた。人員については近々に解決せずとも現状維持でもなんら問題ないかもしれない。それに人数が増えればそれに伴って船や身の回りの物を整えなければいけなくなる。ならばある程度の規模をもった海賊船を襲って丸ごと併呑してしまうのも手か。とキングは考えを巡らせた。カイドウの眼鏡にかなう一団がいればいいのだが。などと溜息を吐いていた矢先、他に碇泊している船舶を睨め付けるカイドウの姿を目にしたキングは小首を傾げた。カイドウにならい、キングも整列している船を見渡すが、その原因は依然として分からない。外界と隔絶された日々を過ごす事を余儀なくされ、知り合いどころか家族すら存在しないキングと違い、カイドウには少年と出会う前までに歩んできた軌跡がある。その過去を想起させるものがあったのかと、兜の中で無意識に眉根を寄せた。
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