自宅内各所、見守りを兼ね監視カメラ完備です「ラギーのおててはまるで魔法のおててね」
白い皮で半月型に包まれた餡が次々とトレイに並んで行く様を飽くことなく眺めながら少女が嘆息するようにそうこぼす。見つめるその瞳は蜂蜜を溶かした満月の色だ。
「まるで……っつーか、これでも正真正銘の魔法士なんスけどね」
ハハ、とどこか乾いた笑いが浮かんでしまうのは彼女の両親には遠く及ばない自覚故。入学できたという、その事実だけで立派なステータスになってしまう名門校で落第することなく卒業できたことは素直に誇ってよいはずなのだが、世界中から優秀な人材が集まる学園にあって卒業後の今も燦然と輝く成績を残し名を刻んだ彼らとは比較すべくもない。決して凡庸な己を卑下したわけではなく、冷静な分析による評価だ。優秀な彼らは誉れと同じだけ――もしかしたらそれ以上に――悪名を轟かせもしていたので実質プラマイゼロでしょ、などと思っているわけではない。断じて。
2151