あまりある未来[君を想う]
「ナルトは手を離さなかったんだね」とサイが言った。サクラは買い物かごを持ったまま、隣に立つサイの横顔を見上げた。いつも通り柔和な笑みを浮かべたまま、サイは「ナルトに野菜も食べさせよう」と手に取った茄子をかごに入れていく。
サイにとってはきっと何気ない言葉だった。記憶の中でまだ下忍だった頃の自分が涙を拭う姿が浮かぶ。サスケの手を離したくなかったのに、自分ではもうどうにもできなくてあの夜に離してしまった。そしてナルトの幼い背に一生のお願いを背負わせたのはサクラだ。当時は必死でなんとか絆を、離れていくあの人を取り戻したい一心だった。
自分のことばかりでナルトの気持ちをどれだけ踏みにじったのだろう。当時、ナルトがどんな思いだったのかはもう知りようがない。
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