即堕ち執事さん執事は顔に飛び跳ねた血液と汗に最悪な気分になりながら穴を掘っていた。埋めるのは今月に入って何人目でしょうか。旦那様が何処で恨みを買って来たのか知りませんが、多すぎる。スコップで土をざくざくと掘り、巨大な芋虫を彷彿とさせる頭陀袋を、尖った爪先の光る革靴が転がした。
「おーい、執事、進んだかい?」
「旦那様、今回は何をやらかしになられたのですか?毎日、襲撃されるなんて……」
「分からん、心当たりがありすぎる。アッハッハッハ。敵も大きい方が良いではないか」
「よろしくないでございますっ」
執事は甲高い声を上げて地団駄を踏んだ。横に立つ恰幅の良い狸が豪快に笑う。まさに狸爺という言葉の似合う初老の男は、穏やかに繕っていたが、不気味な程に寂寥とした目をしていた。
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