アヴァ憎「アヴァリツィアさん、おはようございます」
キングサイズの柔らかなベッドで気持ちよく寝入っていたアヴァリツィアを起こしたのは、よく通る男の声と、無理矢理シーツを剥ぎ取られたことによる肌寒さだった。
悪魔(ディアボロス)であっても強欲を司り五感も鋭く優れている彼にとっては、布団の心地よさを奪われることは苦痛なのだ。
駄々をこねるように数回寝返りをうったあと、アヴァリツィアは仕方なくのそりと起き上がった。
シーツを奪った当の本人は、鼻歌でも歌い出しそうに上機嫌な様子で朝食を用意しているところだった。
昨晩手酷く抱いたにも関わらず、いつもと同じ時間に起床し何食わぬ顔で活動しているところを見ると、さすが武人の端くれだと思う。今晩はもっと酷いことも試してやろうなどと考えながら、憎木が用意した朝食を食べるためヘッドボードの眼鏡を手に取った。
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