新生MCDオンリー展示物「って……」
空却のふとした小さな呟きを、左馬刻は決して聞き逃さなかった。昼下がり、左馬刻はこの後テリトリー内の商会に顔を出す用事まで小一時間ほど時間があった。空却はというと暇をたっぷり持て余して、そのあたりのソファでごろごろと漫画を読み耽っていたところだ。いつもべったり引っ付き合っている一郎がバイトで不在なので、そうすると空却には途端に何もやることがなくなる。
「どした」
「あ……? 何がだよ」
「どっかで怪我でもこさえて来たのかっつってんだ」
簓も別件で出ている今日、珍しくチームの事務所には左馬刻と空却の二人しかいなかった。デスクから左馬刻が声を掛けると、空却はだるそうに体を起こす。左馬刻の問うところを理解してから、ああ、と少し言い淀んだ。
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