火竜と、火竜に恋した男 火竜と、火竜に恋した男
私の家には大昔から一つの予言が言い伝えられていた。
祖先がたまたま助けた流しの予言者が告げたという話の内容はこうだ。
『貴家は何れ王家に嫁ぐ方が現れるでしょう。されど、それは御子孫様にとって不幸な結婚でしかない。何としてでも回避なさるべきです』
国の中でも侯爵家とそこそこ高い地位にある我が家の御先祖様はどうやらこの予言を間に受けてしまったらしい。
厳守するようにと代々の当主に厳命されてきたその予言に従ってそれ以来、王家との縁談が上がる度にあの手この手で回避してきたのが我が家だ。
しかし、何の因果か王家に吊り合う家柄に歳頃の子供がいない時が来てしまった。
婚約を打診された当主はごねにごね、万が一不貞行為や我が家やその者に不利益を齎すような事態が発生した場合は王家に有責で婚約破棄或いは離縁出来るようにと念書を書かせた。
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