黒い塊 彼が降臨したのはけたたましい歓声の中央だった。
『勝者、アポロン!!いやぁ、ポセイドンvsアポロンというなかなか読めないこの対戦カードでしたが、まさかの太陽神の勝利となりました!』
しかし、当の本人であるアポロンは全く状況を理解できていなかった。
「…おじうえ?」
大好きな伯父によく似た黒い塊が目の前に転がっている。焦げと肉の焼けるような臭い。意識の無い間に自分は一体何をしたというのだ。
「伯父上!起きてください!一体何があったんですか!?教えてください!!」
理性が拒絶を続ける中、本能はこれが屍であることを理解し始めていた。駆け寄って手を添えても揺さ振ることはできなかった。
アポロンがいる場所はとあるコロシアムの中央。「人々」はここで神々を戦わせることを娯楽としていた。「人々」はアポロンが泣き喚き始めても特に疑問を覚えなかった。スイッチひとつでコロシアムは神々ごと綺麗に掃除できてしまう便利なものであるからだ。つまり些細なバグなどどうでもいいのである。
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