「ナカゴー!こないだの、……あれ、アヤメさん」
「アンタいつも叫んでるね」
「誰かと何か話しててもぶった斬れるから、つい」
「うわ、悪。待てばいいだろうに」
「アハハ、ついね。あいつは?」
「ナカゴは奥ニャよ」
「あら、じゃあしばらく帰ってこないか。コジリさん伝言頼んで良い?」
「ニャ」
「こないだ頼んだやつ納期3日伸びたのよ。ギルドの方から、調査入るから討伐後ろ倒しにしてくれって言われたの。その間に調整出来そうならしたいからどっかで時間作ってって言っておいてもらえる?」
「伝えておくニャア」
「お願いね」
「調査?大物?」
「うん、バルファルク。アヤメさん防具新しくするの?」
「いや、いつものやつの修理と調整。昔と使う筋肉違ってるからね」
「そっか。全部預けてるから着物なのね」
「そう」
「寒くない?上何か着ないの?」
「持ってない」
「あら。私のやつ使う?」
「いいよ、アンタの持ち物似合わないし」
「似合うわよ。……でも趣味ではなさそうね」
「風邪ひきやしないよ、腐ってもハンターだ」
「普段の装備があれだものね。……おっと」
「愛弟子ー」
「今行く!じゃあねアヤメさん、コジリさん」
「ああ、気を付けて」
「行ってらっしゃいニャー」
「……」
「こっちに来て火鉢に当たるかニャ?」
「……そうさせて」
数日後
「あら、羽織着てる。似合うわね。それ誰の?」
「アタシの」
「うん、元は誰の?ナカゴの?」
「……そうだけど」
「アハハ、かっぱらったのね。今日風強いものね」
「アイツまだ着て外出てないって言ってたのに」
「だって体格と違うし完全に男物だし、アヤメさん意外と面倒臭がりだから昨日の今日でわざわざ買いに行ったりしないだろうし、誰かにお下がり貰ったにしてはやたら新しいし。なら手近な男から巻き上げたのかなって」
「よく見てるね……」
「観察はハンターの基本でしょ。それにしても似合うわねー、渋くて素敵。いいわね、アリね男物。合わせようによっては私も真似できるかしら。……ね、それ裏地は?」
「裏?」
「あいつのことだからそんな凝った意匠じゃあないでしょうけど」
「捲るな捲るな、こら」
「あん、けち」
「アンタのその服への執着はどこから来るんだ……」
「魂の底からよ。……ねーえ、山側の温泉行かない?今日夜」
「露骨なんだよ。行かない」
「いいでしょ、装備じゃないってことは今日は狩り行かないんでしょ。行きましょうよー1本奢るから」
「先約があるから」
「ナカゴ?」
「ナカゴ。とコジリさん」
「……ご飯か。着実に胃袋掴まれてるわね」
「いつも作ってくれる辛めのきんぴらが美味いんだよ。酒に合う。あれは離れられない」
「いいなあ……」