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    aneniwa

    @aneniwa
    マイハン♀ミドリさんの話しかしません

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    aneniwa

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    アヤメさんとハンター♀が雨で足止め食らってるはなし

    寝ながら書いたのであとでちょこちょこ訂正すると思います

     移動をさっさと諦め、シェルターで夜を過ごす段取りを組んだ判断は正解だった。まさかこれほど里に近い場所でここまでの足止めを食らうとは思っておらず、当然野宿の予定もなく、寝袋も天幕も担いでいない軽装だったのだ。天候さえ良ければ数時間とかからず越えられる山のその中腹あたりで、今2人のハンターは身を寄せ合って過ごしている。

     雨は夜半を越えた今でもなお、一層勢いを強めて降り続いている。この辺りでは珍しいほどの豪雨だ。一滴一滴が大きく重い、力強い雨だった。隣で眠る後輩が言った通り、油紙だけではいずれ破れてしまっただろう。大岩が近くにあることを彼女が記憶していたのも助かった。風を防げるかどうかで随分違う。

     太い枝で作った三角形の枠組みに水を弾く油紙を被せ、その上から葉のついた枝を隙間なく被せた、即席のテントの中は狭い。女2人が這い込んで蓋をすればそれでピッタリ、身じろぎする隙間さえ無いほどだ。当然荷物も入らなかった。油紙が1枚しかなかった為、重要な荷物は昨日の狩りでたまたま剥ぎ取っていたルドロスの皮で包んで急場を凌いでいる。朝までに浸水しないことを祈るしかなかった。耐水性のある物や、ある程度諦めのつく物は、泥汚れを防ぐためにそこらの木に引っ掛けておいた。運が良ければ回収出来るだろう。火薬は惜しいが、既に完全に湿気てしまっている。

     狭さを除けば、岩陰に建てた低いテントの中は存外快適だった。身体は既に乾いているし、グースカ寝ている熱源が真横にある。自分が蔦と弾力性のある枝を使って編んだ土台のお陰で、地面からの浸水の心配もない。孤独でなく、濡れて凍えていない夜のなんと安らかなことか。
     雨以外の懸念事項として、ここがジャグラスの縄張り内であることが挙げられるが、彼らは気温の低い夜間の活動が鈍い上、この雨では匂いを辿られにくい。万一に備えて交代で眠ることにしたが、今のところは何かしらの気配を感じることもなかった。

     火を焚くことも出来ず、月も星もない。灯蟲は服の中に潜り込んで眠っている。光源の無い夜、テントの中は当然真っ暗だ。眼を閉じても開いても同じ黒を見続けさせられて、そのうち自身の存在さえあやふやになりかける。
     止まない雨がどこか近くに作りだした、即席の小さなせせらぎが聞こえる。強く風が吹く度に、大粒の雫が屋根の葉と枝を叩く。隣で眠る同胞は、健やかに寝息を立てている。

     誰も見ていないテントの中で、大きな欠伸をひとつ。雨勢はまだ弱まらない。眠気を堪え、頬杖をつき直す。肘の下で、土台に敷いた小枝がパキ、と軽い音を立てて折れた。

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