『親愛なるミドリへ
　先日は良い酒をありがとう。昼頃届いて、夜には２樽とも空になったよ。あのゴロツキども、あたしに全く遠慮しやがらねえ。あいつらも礼言ってたよ。ま、味なんて分かってないだろけどさ。
　お返しを考えたんだけど、もうこっちは夏でさ。ひどく暑いから食べ物関係はやめておいた。この間街に行った時、君が気に入っていたクッションに似たやつを見つけたからそれを送るよ。水鳥の羽根がパンパンに詰まったやつ。素材も縫い目もしっかりしててなかなか上等だよ。大事にしろよ。男といる時に使って破るなよ？
　じゃあ、元気で。また近くに来たら寄ってよ』


『レイカへ

　この手紙が届く頃には、暑さは和らいでいるかしら。変わりなく過ごしていると良いんだけど。

　お酒気に入ってもらえて良かったわ。舎弟さん達にも行き渡るようにって思ったんだけど、足りなかったみたいね。元気で結構だわ。また良いのが手に入ったら送るわね。

　それから、クッションありがとう。すごく気に入った。貴女のご実家のやつよりもね。ふかふかですべすべで最高！もちろん大事にしてるわ！……と言いたいところだけど、すごく言い難いけど、しがみついて少しだけ破っちゃったの。せっかく贈ってくれたのにごめんなさい。今は補修して使ってる。理由はご想像の通りよ、お布団を羽根まみれにしちゃった。

　ところで、頼みたいことがあるのよ。幼馴染に加工屋やってるやつがいるんだけれど、色んな素材を触ってみたいって言ってるの。そっちの固有種の革とか、素材の余剰分があれば送ってもらえると嬉しい。

　それじゃあこれで。近々□□に行く予定が立ったから、もしかしたらそっちにも顔を出すかも。

　ミドリ』


『親愛なるミドリへ
　素材の件了承した。丁度倉庫を整理したくてね、良い時に言ってくれたよ。適当にまとめたから今度送っておく。新旧入り混じってるけど、試しに扱うには丁度いいだろ。スッキリしたよ。
　それで、やっぱりクッションは破りやがったんだな。思った通りだった。手紙を読み上げてたら、ドルガの奴、珍しく声出して笑ってたよ。いや、あたしは怒っちゃいないさ。悪いと思ってるなら、また酒でも送ってこいよ。
　じゃあ』


『レイカへ

　この間は素敵なおもてなしをありがとう。皆の顔も久しぶりに見れて安心したわ。例の件は帰ってすぐ手を打っておいた。近々良い知らせができると思うわ。

　加工屋の友達が素材に埋もれて大喜びしてたわ。たくさん送ってくれてありがと。お礼に、そいつが仕立てた小手を人数分送るわね。その他にも色々作ってたからそれも入れておいた。全部試作品らしいから、遠慮しないで使い潰してちょうだい。凄い量で、加工屋どころか里の共用倉庫まで圧迫してるのよ。使い勝手の感想なんか送ってもらえたら嬉しいって言ってたわ。研究熱心なやつなのよ。

　ではまた。

　ミドリ

　追記
　温泉に入りたいって言ってたわね。先日穴場を見つけたのよ。是非案内したいわ。近々寄ってね』


『レイカへ

　この手紙を持ってるレグルスって男は私の後輩よ。色々世話してやって。
　良い奴だし腕も悪くないんだけど、ちょっと頭が固いのが玉に瑕なのよ。貴女と舎弟さん達でちょっと揉んでやって、世間の渡り方ってやつを教えてやって欲しいの。使えない奴じゃないわ、少なくとも薪割り係くらいにはなるから。よろしく。

　ついでに書くんだけれど、あの件については概ね決着したわ。貴女の言う通りにして正解だった。
　それのお礼とレグルスの世話代に、去年送ったお酒がまた手に入ったから送っておいたわ。今度は４樽。足りると良いんだけれど。

　ミドリ』


『“親愛なる”ミドリへ
　また厄介事を押し付けやがって。何が『使えない奴じゃない』だ、わざわざ盾持ちの憲兵に楯突くようなド阿呆、君の肝煎りじゃないならとっくに竜の巣に放り込んでる。
　まあ確かに君の言う通り、良い奴さ。憲兵に食ってかかったのも、近所のチビ共を助けようとしてのことだった。生き辛い性格してるよ。ここに来て２ヶ月は経つがまだ馴染まないし『上手いやり方』も取り入れない。石頭が。
　よく気がつくし馬鹿じゃないね。目も良い。薪割り係にしとくにゃ勿体ない。身体はデカいが、斥候役の下っ端にしてこき使ってるよ。今のところ五体満足で指も欠けてない。ただ馬鹿だね。手下共とは度々衝突してるようだね。あたしの知ったことじゃないが。
　冬季にあれを抱え込むのに、酒４樽じゃあ足りないね。何かしら追加を送ってきなよ、ゴロツキ共気が立ってやがる。君の評判に関わる。

　忘れるところだった、加工屋に礼を言っておいてくれ。武具の評判は上々だ。小手もそうだが、特に鉄弓の使い心地にアンドレが感激していてね。抱いて寝るくらいの入れ込みようだ。そうでもしないと盗られるのさ。
　ただ、ここらじゃ剥き出しの金属は使えない。夏も冬も厳しすぎるんだ。今時分は、下手に触ると引っ付いて面倒なんだよ。アンドレは自分で皮を巻きつけて使っているようだね。
　あたしは胴当てが気に入ってるよ。染めが良い。もっと砂嵐の中でも目立つような鮮やかなやつが欲しいね』


『レイカへ

　なんだか予想以上に大変なことになってるみたいね。あいつには良い修行でしょうけど、貴女達に負担をかけるつもりはなかったのよ。良く言い聞かせておくべきだったわね。ごめんなさい。
　取り急ぎ舎弟の皆さんには、この前のよりは質が劣るけどお酒と珍味をいくらか、それと、極地向けに改良した装備を数点送ったわ。特にナイフは自信作だそうよ。貴女には装飾品を。別に包んで入れてあるから、貴女自身が開封してちょうだい。そうそう、梱包材は好きに使ってね。気に入ってもらえるといいんだけど。

　ミドリ』


『我らの友人・ミドリへ
　いや、素敵な贈りものをありがとう。おかげで腰の据わりが良くなった。もう少し雪が解けたら、何人かで連れ立って行くから是非会ってくれ。直接礼が言いたい。そうだ、温泉にも浸かりたいね。
　冬を越えて、君の後輩も少しばかり使えるようになってきたよ。彼も連れて行く。』


『レイカへ

　気に入ってもらえたようで良かったわ。
　いつでも来てちょうだい、と言いたいところなんだけど、所用で少し里を離れているの。
　もう用は済んだから帰るところなんだけど、行き違いになるのも良くないし。どこかで落ち合えないかしら？私は今△△から西に向かって、隊商の護衛をしながら○○を目指しているわ。

　ミドリ』


『ミドリへ
　またえらく遠出したね。我々は明日発つ。○○で落ち合おう。』