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    aneniwa

    @aneniwa
    マイハン♀ミドリさんの話しかしません

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    aneniwa

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    同棲してるハン♀アヤ(マイハン)
    先日画像で載せたやつ一字一句そっくりそのまま

    雪の朝 明け方には雪が降り始めた。重い、湿っぽい雪で、それでも折からの寒さもありズンズン積もっていった。裸足で歩けばくるぶしまで埋まるだろう、勿論そんなことは絶対にしないが。
     そもそも私は暑さよりは寒さの方が耐え難いという性分だった。それで、朝日が差すまで温い布団の中でぐずくずしていたのだが、今日は近隣の里の者達との会合がある。遅刻して里長の面子を潰すわけにはいかないので、渋々布団から這い出て、まず火鉢の火を搔き起こし炭を足した。

    「たぶい」

     と舌ったらずに独り言を言いながら、褞袍を引っ張り出して着込む。足も勿論寒いのだが、どうせすぐに着替えるので我慢する。髪を適当に纏めながら土間に降り盥に水を張って、少し気合を入れて手を突っ込んだ。死ぬほど冷たい。

    「ひい」

     洗面を済ませ、火鉢で手を温めながら化粧をして、カムラの蒼い装備に着替えた。流石に丈の短さが気になる。鍛錬は怠っていない、見られて恥ずかしい身体つきはしていないので、大腿部を見せびらかすことについては何とも思っていないのだが(そもそも女性ハンターの装備の中では大人しい方だ)今日のような日はキツい、防寒面で。それでも、今日の自分はカムラのハンターとして挨拶をせねばならないので、これを着るしかないのである。世知辛い。

     準備は済んだ。出かける前に布団を覗きにいくと、この部屋のもう一人の住人は寒気を避けてか頭まで潜って丸まっていた。布と綿を隔てた向こうからすうすうと寝息が聞こえる。顔を見てから出たかったのだが、起こすのも悪い。
     着替える前に着ていた褞袍を隣にそっと置き部屋を出ようとしたところで、「出るの…」ともにゃもにゃ聞こえた。振り返ると布団から、白い腕が一本ぬるりと出てきている。これで辺りが暗ければちょっとした恐怖画だ。
     一瞬動きを止めた腕はふとまた動き出し(寝落ちかけたらしい)、布団をかき分けて銀髪の女が顔を出す。……目がほとんど開いていない。

    (かわいすぎる)

     また動かなくなった同居人をじっくり眺めながら頭を抱えた。たまらん。この寝起き姿だけでご飯3杯はいける。普段の気怠げでありつつ涼やかな姿とのギャップが最の高。あっ寝癖ついてる。ぐぅとか言ってる。誰かご飯持ってきて、5杯。
     心情としてはもう、もう一度布団の中に舞い戻って全身で抱きしめたいのだが、生憎既に装備を身につけている。特に左手の爪が危険だ、不用意に布地に触れては破きかねないし、万一にも恋人の肌を傷付ける恐れのあることは避けるに限る。まあ多少の引っ掻き傷などものともしない人だけど。そういえば今更かもしれない、割と毎晩自前の爪で引っ掻いちゃってる。そこはお互い様だけれど。お風呂に浸かると沁みる。
     閑話休題。私は布団の脇にしゃがみ込み、爪のない右手でアヤメさんの頭を捕まえた。ん?、とまた薄目を開いたほっぺたに、額に、瞼に指先で触れ、最後に唇をなぞる。こちらの意図を理解してかただの反射か、薄く開いたそこにかぷりと噛み付いた。

    「んん」
    「んー…」

     ちゅくちゅくと水音を立てながら、うなじを撫でたり耳をくすぐったり。悪戯していた右手をぐいと引っ張られ、布団越しにアヤメさんを押し倒しているような体勢になった。見下ろした暗い色の瞳は挑戦的に笑っている。寝起きの割に、珍しく機嫌が良い。やったぜラッキーともう一度口を合わせようとして、手の平で止められる。

    「うに」
    「……紅落ちてるよ」

     寝起きの掠れ声も最高。ますます近付きたくなる。

    「あとで」

     指の隙間から抵抗の意思を示すも、手は退いてくれない。それどころかむにむにと頬を挟まれ、変顔をさせられる。黒い瞳がますます細まる。

    「時間は?」
    「……やばい」

     手はどかしてくれたけれど、流石にここまでか。こちんと額を合わせてクスクス笑い合い、軽く突き飛ばされて「ちぇ」と渋々起き上がる。名残惜しいが仕方ない。
     もう一度鏡台に向かう私を、アヤメさんは頬杖を突いて眺めている。肌けた寝巻きから素肌が覗いて大変に目の毒だ。戻りたい。今日は彼女は狩猟に出る。私がつまらない会合で暇している間に、寒冷群島へ向けて出発してしまうのだ。少なくとも5日は会えないというのに、しかもこんなに機嫌が良いのに。世知辛い。
     世の無情に嘆きながら化粧を直し終わり、冗談抜きにギリギリの時間になったので急いで足装備を身に着ける。

    「行ってきな」
    「行ってきます。アヤメさんも気をつけてね。行ってらっしゃい」
    「うん。行ってくるよ」

     玄関を出ると、眩い一面の白が出迎えた。風が吹き込まないように素早く戸を閉める。アヤメさんも実は、私以上に寒さに弱いのだ。知っている人は少ないので、優越感。
     さておき一歩目だがもう帰りたい、寒い。主に太腿が。しかしながら今日の私はカムラのハンターであり次期里長であるので、それらしく表情を取り繕って歩き出す。世知辛い。ああ狩りだけしていれば良かった頃が懐かしい。大人の世界は面倒だが、数日後の再会を楽しみに乗り切る所存である。本音を言えば今すぐ帰りたいが。


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    km64_lf

    DONEレノフィが膝枕してるところに晶くんが通りがかるだけのはなしです。
    謎時空。
    ふたりにとってはいつも通りだけど、側から見たら明らかにいちゃついている……というのと、
    甘えたなレノさんを書きたいという欲望をずっと持っていたので、
    すごく楽しかったです。
    膝枕をするレノックスとフィガロ 日が穏やかに照り、風がそよ吹く気持ちの良い午後。晶はキッチンへ行こうと、魔法舎の廊下を歩いていた。窓外に楽しげにはしゃぐ子どもたちの声がして、その穏やかで平和な様子に思わず笑みが浮かぶ。今日は任務がなく、訓練も午前の内に済んで、いまは各々が自由な時間を過ごしていた。
     晶は談話室の前を通りかかって、足を止めた。意外な光景に目を奪われて、思わず凝視した。
     談話室自体の様子は、穏やかな午後といった感じで変わったところはない。だが、そのソファを占有する二人組の様子が、晶にとって意外だったのだ。
     ソファを占有していたのは、フィガロとレノックスだ。彼らはふたりとも本を読んでいた。上着を脱いで、くつろいだ様子。ここまでは、意外でもない。だが、座るフィガロの腿に頭を乗せて、レノックスがソファに寝転んでいた。それが意外だった。
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