【空蝉日記 短編】秋の契りは三の月に「うっわ寒っ。」
突然吹き付けてきた秋風に身を震わせつつ、身を守るようにして両の腕をさする。先月までは強烈な猛暑だったのに、もうすっかり気温が下がってきた。過ごしやすいと言えば過ごしやすいが、如何せん寒がりな僕としてはこれはこれで堪える。
赤く色付いてきた通学路を歩いていると、少し先にもう一つの赤が見えた。
「叶夜〜。」
「……?おー。」
歩み寄りながら声をかけると、その赤髪はイヤホンを外しながらこちらを向いた。
「お互い部活やってないから僕らだけ帰るの早いよね。」
「ん。まぁお前は転校してきたばかりだし。」
「今の時期、外で部活してる皆は寒いよね〜。」
「な、怜音先輩とか特に寒いの苦手って言ってたし。」
他愛もない話をしつつ、お互い特に気を張ることもないままゆったりと歩幅を合わせる。普段は口達者で揶揄い好きな叶夜は、なぜか僕と居る時だけぶっきらぼうな態度だ。
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