夕方になるにつれ増えてきていた人波は今はまばらになっていた。もうすぐ花火が上がる時間だ。みんなもっと近くで見るべく花火会場の方に移動したのだろう。霊幻と律が共に暮すマンションの窓からも花火は見えるが少し遠いのだ。霊幻は花火が上がる方向の窓のカーテンを全開にした。
「もうすぐですね。」
「ああ、冷房効いた部屋から花火観覧なんて贅沢だよな〜。」
「ここにして良かったでしょう?」
「確かにな。」
突然花火の美しい光が二人を照らす。
ドーン…!
少し遅れてから大きな音がした。
「今年も綺麗ですね。」
「そうだな。」
部屋から花火を見るのは最高だ。冷房が効いてて、飲み食いは好きなだけ用意できて、人混みと無縁だ。そして。
「…霊幻さんて花火で欲情するタイプなんですか?」
「なんでだよ。」
「だって毎年。」
「んー…非日常だから?」
「なるほど。」
花火の光が律の瞳に肌に反射して輝く。万華鏡のようだと霊幻は思った。