仲良きことはうつくしきかな スタプロの事務所に入るなり、朔間零は己の耳を疑った。
「英智さん。例の件ですが、どうなりましたか?」
他人に尋ねているとは思えないほど、あんずの質問は唐突で、漠然としていた。とくに抱える仕事の件数が多そうな英智にとって、あんずが言う『例の件』を当てるのは難題だろう。
しかしそう考える零の予想を裏切るかのように、英智は答えに詰まることなく、あんずの質問に素早く返事をした。
「当日マネジメントリーダーをしていた彼に引き継いだよ。わかりやすい資料で助かったと言伝を頼まれていてね。君が評価されるのを聞くと僕も鼻が高いよ。あ、それからあんずちゃん。あれについてなんだけど……」
あれっていったいどれのことだ? そんな指示で伝わると思っているのか? と、零は内心毒づいたが、みなまで言わずともわかるらしく、あんずは英智の言葉にかぶせ気味にして応えた。
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