きっと、きっとなんにも知らない 人間、誰だって生まれを選ぶことはできない。十五歳でやっと気づいた真実は残酷。
あー、違う違う、あたしが家族と仲悪いとかそういうんじゃなくて!
ほら、幼馴染ってあるじゃん。いつからの知り合いだったら「おさななじんでる」ことになるんだろう? 同じ小学校はアリ? それとも幼稚園? 生まれた病院が一緒じゃなきゃダメ?
でも考えたところであたしは何者にもなれない。
あれは……いつだったっけ。そうだ、あの日だ。八月。めちゃくちゃ暑くって、バレないようにこっそりした化粧も塗りまくった日焼け止めも全部汗で落ちた日。ダサいダサいって言いながら、でかでかと立海大附属中学校の名前が踊るマフラータオルを頭巾みたいに被って、あたしたちは試合の行く末を眺めていた。
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