魅入られた者 俺がその少年を見かけたのは、偶然のことだった。
年の頃は十に届くかどうか。
友だちだろうか、白髪に赤い目の少年と一緒に広場の噴水の傍らで休んでいる様子だった。
その子は、長く伸ばした黒髪を編み込みにし、前髪は垂らしていた。
女の子のように美しい顔立ちだが、周囲に目配りする目つきはその年に似合わず鋭い。
何よりも印象的なのは、その瞳だった。
暗いチャコールグレーの瞳に水面に反射した陽光が射し入り、闇の中に焔を灯したように輝いている。
俺は息を呑んでその場に立ち尽くした。
雷に打たれたように、その焔に魅入られて麻痺していたのだ。
と、彼がこちらをちらりと見た。自然な風を装って周りを見回すその途中でたまたま視線が過ぎった、それだけのことかもしれない。だが、俺はその視線に射抜かれたように感じて身を震わせた。
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