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    COMOYAMA

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    COMOYAMA

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    あまのじゃく ばかっぷるべそと可愛そうなメフィ添え

    ##小説

    トン、トントン。

    指先でテーブルを突っつくベリトは不機嫌だった。メフィストがうまい酒があると言うので、連れ立ってはるばる辺境に来て5日。資金には事欠かないので、毎日酒を飲んでダラダラと過ごしていたが、とうとう苛つきが頂点に来たようだ。

    「いいじゃねえか、なんの呼び出しもないってことは。平和なんだよ」
    「なんの話だ」
    「ソロモンがちっとも頼ってこないからヘソ曲げてんだろ」
    「曲げてねえ」

    声を荒げるベリトをよそに、酒瓶をあおりながらメフィストは笑っている。

    「俺は好きだけどなーこの生活。人の金で酒飲んで遊べて、最高」
    「そろそろテメェの赤い顔も見飽きてきたんだよ」
    「ひどくねえか?んじゃあもう先帰っちまえば」

    メフィストの目利き通り、ベリトも好むような良い酒を大量に買い付けることができたのは事実だった。なので、これ以上ここに留まる理由は特にない。

    「俺はもうちょっと遊んでから帰るわ」
    「荷物の手配ちゃんとできてんだろうな」
    「バッチリよ、まかせとけって」

    突っ伏してへろへろと手だけ振っている。大丈夫かこいつ。呆れたため息をついてベリトは酒場を出た。ポータルまで歩けば半日といったところだが、乾いた大地を太陽がギラギラと照りつけている。同じ方角を行くキャラバンの馬車にでもと思ったが、さすが辺境、見渡しても誰もいない。

    「クソ、マジで全然呼びやがらねえなあいつ」

    おい喚べソロモン、俺様が困ってんだぞ、と念じてみたが、空を行く鳥の声がするだけだった。




    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




    今日はほとんどのメギドが出払っていて、残った小さなメギドたちの世話はソロモンがしていた。夜になり、ようやくアジトに静けさが訪れる。

    「アムドゥスキアス、やっぱり一緒に俺も起きてるよ」
    「いえ、あなたは休んでください。私もメギドですので、寝ずの番くらい出来ます…」

    暇つぶしのためにソロモンと一緒に見繕った本を抱え、アムドゥスキアスは嬉しそうだ。メギドとはいえ、健気な子供にこれ以上仕事を任せるのは気が引ける。

    「でもやっぱり」
    「大丈夫です。なにかあればすぐに知らせ…あっ…?」

    ぱた、と少女の羽根がはためく。

    「どうした?」
    「いえその、お戻りのようです…」
    「誰か帰ってきたんだな!ちょうどよかった、ポータルの番をしてもらおう」
    「ですが…」
    「その本は明日日が昇ったら明るいところで読もう。そのほうがいいよ」

    ソロモンに笑顔を向けられ、アムドゥスキアスもつい頷いてしまった。大丈夫だろうか。うん、きっと、大丈夫…。



    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



    「なんだ、ベリトじゃないか」
    「なんだとはなんだテメェ!俺様が帰ってきてやったんだぞ!」

    ポータルの前でへたり込んでいたベリトは、ソロモンの姿を認めるなり立ち上がって詰め寄った。

    「ごめん。えっと、おかえり」
    「テメェが全然喚びやがらねえから、ここまで歩く羽目になったんだ!」
    「だってせっかく外で羽根伸ばしてるんだし。あと用事なかったし。大きい声出さないでくれ」
    「テ、メ、」

    まだ何か言い返してきそうな気配。察知したソロモンは間髪を入れない。

    「大体お酒を買いに行くって、うきうきしながら出かけたのはベリトとメフィストだろ!自分の用事で出ていって、帰り道は俺が喚ばないから怒るって。それはないんじゃないのか」
    「ぐ…」

    黙った。勝った。

    「その。休んでる仲間もいるからやめよう」
    「…」
    「おかえりってば」

    不服そうに腕を組んだベリトからは返事はない。言い過ぎたか…と思っていると、うしろのポータルが光ってメフィストが現れた。酒瓶を手にふらふらと歩いてベリトの肩を掴む。

    「へっへっへ、違うぜソロモン、ベリトはよぉ」
    「後から来るんじゃなかったのかよ、つか触るな、クセェ」

    ドスドスと肘で突かれても(酔いで)効いていないのか、メフィストは続ける。

    「ソロモンが頼ってこないから拗ねてやがるんだよ。機嫌が良かったのなんて最初の1日だけだぜ?次の日にはソワソワしだしてよ。その次の日もお呼び出しがねえからもう、眉間、こんななってよ、アッハッハッハ!」
    「テ、メェは…!そろそろ黙ってろ!」
    「ベリト、やめろ!」

    胸ぐらを掴む両腕には力がこもっている。

    「もうちょっと待ってれば馬車で帰ってこれたのによ。次は3日後だっていうから俺も乗ったってわけ」
    「そうかよ。で、荷物の手配はちゃんとしたんだろうな」
    「あ?」
    「金預けただろうが」
    「あっ…?忘れた!」
    「もっかい行って来い」

    ソロモンの静止もむなしく、ベリトは振りかぶってメフィストをポータルに投げた。あ、とか、ひゃ、とか聞こえた気がするが、酔っぱらいはもういない。

    「ベリトーーーーー…」

    舌打ちだけ聞かせてベリトは去ろうとする。行ってしまったメフィストはもう仕方がない。とりあえずここに来た目的を伝えなければ。


    「ポータルの番をしてくれないか」
    「あ?なんで俺様が!」
    「じゃなきゃ、アムドゥスキアスがやるって言い出すと思う。昼間もよく手伝ってくれて…」
    「わかったわかった」

    その名前を出されては踵を返す他はなかった。やれやれと、少し離れた手すりに腰掛ける。

    「こき使ってくれるじゃねえか」
    「頼りにしてるんだよ」

    礼を言おうとベリトの前に立つと、手を引かれた。向かい合わせで両手を繋いだら、確かめるように触れてくる指が熱かった。

    「日焼けした?」
    「したかもな。もういい、テメェはさっさと寝ろ」

    急に興味のないような言い方で。歩いて帰ってきたんだぞとか、さっきまで怒っていたくせに。こらえきれず笑うと、ぱっと手を離された。

    「後でおしおきしてやっからな」
    「今でもいいよ」

    離された手をもう一度繋ぐと、ベリトは目を丸くしている。

    「ふ、くくく」

    グレモリーがベリトのことを天邪鬼だと言っていた意味がよくわかった気がして、可笑しいのがもう押し殺せない。今度こそ怒ったベリトに抱き込まれても、声は止められなかった。

    「さっきから随分な態度じゃねえか?」
    「はは、もう、ばかみたいだ」
    「誰がだよ」
    「俺も、ベリトも、なにやって、あはは」

    素直におかえりと言えばいいものを、今日は「なんだベリトか」なんて言ってしまった。理由なんてわかっていたし、そんな態度を取ってしまった自分が恥ずかしくて、つまらなくて、ばかみたいで笑うしか無い。背中や腰に伝わる大きな手の感触すらくすぐったい。


    「気に入らねえな。そんなに可笑しいかよ」
    「あ、あー…くくくく…離して…」
    「覚悟しろ」


    涙まで浮かべて体を震わせているこのたのしいおもちゃを、ベリトが手放すはずはなかった。
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